
「会社の規定で止まる」の正体

AIを触り始めた方から、よく聞くのが、この話です。
「会社の情報を、AIに入れていいのか分からない」
「ChatGPTを使おうとしたら、総務に止められた」
「社内に規定がないので、怖くて何も入れられない」
いちばん多いのが「会社の規定で止まる」という声です。会社として禁止しているわけでもないし、許可しているわけでもない。誰も決めていない。だから、使っていい人も、様子を見てしまう。結果として、便利な道具が目の前にあるのに、誰も触れない状態になります。
帝国データバンクが2026年3月に出した調査では、企業が生成AIを導入する時の課題として「情報漏洩のリスク」が4位の33.5%でした(1位は情報の正確性50.4%、2位は専門人材不足41.3%、3位は業務範囲が不明確40.0%)。3社に1社が、情報の扱いに不安を持っている計算です。
でも、現実には、ちゃんと情報が漏れた会社は、同じ調査で0.7%と報告されています。「怖い」と思っている人が多いだけで、実際に事故が起きた割合は、とても小さいです。怖さの大半は、どこまで入れていいか決まっていないことから来ます。
今日は、その「決まっていないこと」を、紙1枚で決める方法を書きます。前回(議事録)で「録音をAIに渡す」話をしましたが、その録音には、お客様の名前も金額も入っています。渡す前に、何を決めておけばいいのか、ここで整理します。
▶ 関連:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」
AIに入れていい情報・入れていけない情報

まず、情報を3つに分けます。これだけで、ほとんどの迷いが消えます。
A:そのまま入れていい情報(公開情報)
- 自社のホームページに載っている内容(会社案内・サービス紹介)
- 公開資料(プレスリリース・公式ブログ)
- 公開されている他社の情報、ニュース、公表されている統計
これは、もう世の中に出ている情報です。AIが学習してもしなくても、誰でも読める状態なので、気にせず入れて構いません。
B:加工すれば入れていい情報(社内情報・取引先情報)
- 社内の会議メモ(固有名詞・金額を伏せた形)
- お客様とのやり取り(名前を「Aさん」、会社名を「X社」に置き換えた形)
- 社内の数字(売上そのものではなく、傾向や比率に直した形)
これは、匿名化してから入れます。たとえば、「鈴木様から見積の依頼」という文章を「Aさんから見積の依頼」に書き換えてから、AIに渡します。これだけで、万が一その内容が外に出ても、誰のことか分かりません。
C:入れてはいけない情報
- お客様の個人情報(氏名・住所・電話番号・メールアドレス・マイナンバー)
- 社員の個人情報(給与・評価・健康情報・家族情報)
- 契約書の原本(相手との秘密保持契約で守られているもの)
- 自社の未公開の重要情報(新商品の設計図・買収の話・特許の中身)
これは、どんな設定にしていても、AIに入れません。入れた瞬間、相手との約束を破ることになります。相手の了承なしに個人情報を外部サービスに渡すこと自体が、個人情報保護法で守るべき範囲から外れる動きになります。
この3つの線引きを、まず社内で揃えます。AIが怖いのではなく、どの情報がA・B・Cのどれなのか決まっていないのが、本当の怖さです。
▶ 関連:AI導入で最初に必要なのは、ツール選定ではなく「渡す情報の棚卸し」
「学習に使わない」設定の、やり方

B(加工すれば入れていい情報)を扱うときは、もう一つやっておくことがあります。AIが「あなたが入れた内容を、次のAIの勉強に使う」のを止める設定です。
これは、無料プランでもできます。やり方を、2つのツールで書きます。
ChatGPT(スマホ・パソコン共通)
1. 画面の左下にある、自分のアイコンまたは名前を押す
2. 出てきたメニューから「設定」を選ぶ
3. 「データコントロール」を選ぶ
4. 「すべての人のためにモデルを改善する」のスイッチをオフにする
これで、以降に送った会話は、ChatGPTの学習データに使われなくなります。英語の設定画面では「Improve the model for everyone」と書かれています。
Google Gemini(スマホ・パソコン共通)
1. ブラウザで `myactivity.google.com/product/gemini` を開く
2. 「Gemini アプリ アクティビティ」のページが開く
3. 「保存する」のスイッチをオフにする(または「オフにする」のボタンを押す)
これで、以降の会話が将来のAIの学習に使われなくなります。ただし、Googleの公式ヘルプには「安全性のため72時間はデータが保持される」「人の目による確認は続く場合がある」と書かれています。完全に残らないわけではありません。
ここで気をつけること
- 設定は、一度やれば永続します(やり直す必要はない)が、ツールを変えたら、またやり直しです
- 無料プランでもできますが、法人契約(ChatGPT Enterprise・Gemini Enterprise)では、最初から学習に使われない設定になっています
- 設定をオフにしても、「C(入れてはいけない情報)」は入れません。あくまでBを扱うときの安全策です
▶ 関連:Google Gemini公式ヘルプ「Gemini アプリ アクティビティ」
【実物】社内ルールのチェック表(5項目)

ここからが実物です。社員が迷わずにAIを使えるように、下の5項目を紙1枚にまとめます。会社の規模が小さくても、1人でも、同じ型で作れます。
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【会社名】AI利用ルール(◯年◯月版)
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■ ルール1:AIに入れていい情報の線引き
AIに入れていいのは、次のA・Bに限る。Cは入れない。
A(そのまま可):ホームページ・プレスリリースなど公開情報
B(匿名化すれば可):社内会議メモ・取引先とのやり取り(名前・金額を伏せる)
C(禁止):お客様の氏名/連絡先/マイナンバー、社員の給与/評価、
契約書の原本、未公開の重要情報
■ ルール2:匿名化のやり方
Bを入れるときは、必ず下に置き換えてから貼る。
会社名 → X社・Y社
個人名 → Aさん・Bさん
金額 → ◯万円・ゼロが6個の金額
日付 → ◯月◯日(確定日は伏せる)
■ ルール3:設定で「学習に使わない」をオフにする
ChatGPT:設定 → データコントロール → 「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ
Gemini:myactivity.google.com/product/gemini → 「保存する」をオフ
(無料・有料どちらでも、全員が初回に実施)
■ ルール4:使っていいツール・使わないツール
使っていい:ChatGPT/Claude/Gemini(有料・無料とも)
※ 上記以外(新しいツール・個人サイトのAI)は、担当者に相談してから使う
■ ルール5:困ったときの相談先
AIに入れていいか迷ったら、送信前に下記に相談する。
一次:◯◯部の△△さん
二次:代表/総務
(相談してから進めるのが、怒られるより早い)
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制定:◯年◯月◯日 / 見直し:半年ごと
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これを紙に印刷して、朝礼で1回読み上げるか、社員のパソコンの横に貼ります。ここまで決まっていれば、「使っていいんですか?」の確認で止まる時間が、ほぼゼロになります。
ひと言、まとめます。
AIが怖いのではなく、ルールが無いまま使うのが怖い。紙1枚のルールが決まれば、社員は迷わずAIを使える。禁止するよりも、線引きを決めるほうが、何倍も早く会社が前に進みます。
▶ 関連:AIに書類を作らせて危険なこと・安全なこと —— 現場所長のための線引き
事故を防ぐ、送信前の3秒チェック

ルールを作っても、毎回全部を思い出すのは大変です。送信ボタンを押す前の3秒だけ、下の3つを目で見ます。
1. 画面に、人の名前はないか
- お客様・社員・取引先の、本名が残っていないか
- 「鈴木様」「田中部長」「山田さん」のまま貼ってしまっていないか
- 残っていたら、Aさん・Bさんに書き換えてから送る
2. 画面に、具体的な金額はないか
- 「3,250万円」「月額48,000円」のような、特定できる金額が残っていないか
- 「約3千万円」「月額5万円程度」のように、ざっくりした桁に直す
- 契約書の金額は、桁も伏せる
3. 画面に、会社名・物件名はないか
- 「株式会社◯◯」「△△ハイツ101号室」のような、特定できる名称が残っていないか
- 「X社」「物件A」のように、記号に置き換える
- 相手の会社と、まだ公表されていない取引の情報は、特に注意
この3秒を習慣にすれば、ほとんどの事故は、送信前に止まります。送ったあとで取り消すのは、ほぼ不可能です。送る前の確認が、唯一の守りです。
▶ 関連:AIに任せて事故りかけた話 —— 数字と固有名詞は人が確認する
同じ困りごとなら、代わりにやります
「うちにはAIのルールが無い。でも、何から書けばいいか分からない」
「社員から『使っていいんですか』と毎回聞かれる。1枚のルールにまとめたい」
「業種(建設・製造・小売)に合わせて、入れていい情報・いけない情報を整理してほしい」
そんな社長は、私に任せてください。会社の仕事内容と、お客様の情報の持ち方に合わせて、紙1枚の『社内AI利用ルール』を作ります。社員が迷わず、同じ品質でAIを使えるようにします。半年に1回の見直しまで含めて、仕組みにします。
その困りごと、AIで解決します。
御縁の事業:DXとAX(AIトランスフォーメーション)

御縁は、中小企業のDX(紙と手作業を、デジタルに整える)とAX(AIが仕事を回す会社にする)を、社長の右腕として引き受けています。
バックオフィスのAI化・業務ツールづくり、数字の分析、ホームページ・動画・AI検索対策まで。1社ずつ、本業に集中できる仕組みにします。
▶ 事業の詳しい内容:AIエージェント企業支援事業(御縁)
▶ サービス一覧:御縁のサービス
参考データ・関連記事
- 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」— 生成AI導入時の課題4位は「情報漏洩のリスク」33.5%、実際に情報が流出した企業は0.7%
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260514-genai/
- Google Gemini公式ヘルプ「Gemini アプリ アクティビティ」— 保存をオフにすると今後の会話が学習に使われない(安全性のため72時間は保持)
https://support.google.com/gemini/answer/13594961
- 御縁ブログ「AI導入で最初に必要なのは、ツール選定ではなく『渡す情報の棚卸し』」— 情報の棚卸しの進め方
https://goen-growth.com/ai導入で最初に必要なのは、ツール選定ではなく「/
- 御縁ブログ「AIに書類を作らせて危険なこと・安全なこと —— 現場所長のための線引き」— 業務で使うときの線引き
https://goen-growth.com/aiに書類を作らせて危険なこと・安全なこと-──/
次回は、「無料と有料、何がちがう? 月いくらから始めればいい?」です。この記事で「設定をオフにする」話をしましたが、無料プランと有料プラン、どこがちがうのか、月いくらから始めればいいのか、を書きます。
質問は、コメントへどうぞ。次の記事で答えます。
「うちの会社でも、今からAIを始められる?」という相談は、LINEで受け付けています(30分無料)。
御縁 代表 石本政晴

