「資料請求フォームは置いてあるけれど、送信数が伸びない」——住宅会社のサイトでこの相談を受けたとき、最初にやるのは広告費や見出しの見直しではありません。
まずは、どこで何%の人が離脱しているのかを、感覚ではなく数字で切れる状態にすることです。数字で切れれば、次に手を入れるべき1箇所が具体的に決まります。フォームの入り口が細いのか、入力の途中で書き終われないのか、送信直前で止まっているのか——ここが分かるかどうかで、その後の1ヶ月の動きがまるで変わります。

目次
前提:業界平均のフォーム離脱率は6〜7割。感覚では改善できない
一般的なWebサイトの問い合わせフォームは、到達した人の6〜7割が送信までたどり着かずに離脱すると言われています(BOOSTTECH MEDIA)。10人がフォームまで来ても、実際に送信するのは3〜4人という水準です。
住宅会社の場合、資料請求は無料オファーなので相対的に完了率は高くなりやすいのですが、それでも来場予約や個別相談を絡めたフォームは項目数が多くなりがちで、離脱率が業界平均を上回ることも珍しくありません。
問題は、この離脱を「多分ここで離脱しているだろう」の感覚のまま、フォームの項目を減らしたり、送信ボタンの色を変えたりしても、当てずっぽうになってしまうことです。当たれば直りますが、外れれば数ヶ月分の打ち手が空振りします。
先にやるのは、GA4で4ステップに分解して、どこで何%落ちているかを数字で見える状態にすることです。数字が見えれば、直す順番が自動で決まります。
見るべき4つのステップ(住宅会社の資料請求フォーム)
住宅会社の資料請求フォームは、大きく4つのステップに分けられます。この4つのどこで何%落ちているかが分かれば、次の1手はほぼ自動で決まります。
- ①サイト訪問(トップページ・LP・施工事例など、どこかに着地した状態)
- ②フォームページ到達(資料請求フォームのURLを開いた状態)
- ③入力開始(フォームのどこか1項目に手を触れた状態=`form_start`)
- ④送信完了(送信ボタンを押して完了ページに到達した状態=`form_submit`)

①→②で落ちるのは「フォームに来ない」問題、②→③で落ちるのは「フォームを見て入りたくない」問題、③→④で落ちるのは「入り始めたけど書き終われない」問題です。原因が違えば、直す場所も変わります。ボタンの位置・フォームの見た目・入力項目の順序、それぞれ効くステップが違います。
手順①:GA4の拡張計測で `form_start` と `form_submit` をオンにする
GA4には「拡張計測機能」という自動計測があり、そのオプションに「フォームの操作」があります。これをオンにすると、標準的なHTMLの`form`要素であれば `form_start` と `form_submit` の2つのイベントが自動で記録されるようになります(GA4 Quick.com)。
- `form_start`:セッション中に初めてフォームを操作した瞬間に1回だけ発火
- `form_submit`:送信ボタンを押した瞬間に発火
設定手順は、GA4の「管理」→「データストリーム」→「ウェブ」→「拡張計測機能」を開き、「フォームの操作」のトグルをオンにするだけです。テーマを触る必要も、タグを追加する必要もありません。

ただし、この自動計測は万能ではありません。次のようなケースでは `form_start` や `form_submit` が発火しないことが実務ではよくあります。
- フォームが標準のHTMLの`form`要素で組まれていない(`div`とJavaScriptで独自実装されている)
- 送信ボタンが`type="submit"`ではない(JavaScriptで`click`イベントを拾って送信している)
- フォームが外部サービス(Googleフォーム・formrun など)に埋め込まれている(親サイトからは中の動きが見えない)
- 入力から送信までがページ遷移なしのSPA構成(動的にDOMが差し替わって取れない)
このあたりは、公式ヘルプでも「自動計測が安定しないケースがある」と明記されています(GA4のフォームの操作の設定方法)。まずはオンにして数字が入ってくるか1週間見る、入らなければ後述の回避策に切り替える、という順序が安全です。
手順②:GA4のファネル探索で4ステップを設定する
`form_start` と `form_submit` が取れる状態になったら、GA4の探索メニューからファネル探索を開きます。ファネル探索は、登録したステップごとに「何人が次に進み、何人が離脱したか」を階段状のグラフで可視化してくれる機能です(ブンセキー)。
住宅会社の資料請求フォームなら、次の4ステップで組みます。
| ステップ | 条件 | |---|---| | ①サイト訪問 | イベント名 = `session_start` | | ②フォームページ到達 | ページパス = `/contact/`(フォームのURLに合わせて調整) | | ③入力開始 | イベント名 = `form_start` | | ④送信完了 | イベント名 = `form_submit`(またはサンクスページの `page_view`) |

設定のコツは、ステップ間の接続条件を「次の間接ステップ」にすることです(ブンセキー)。「次の直接ステップ」だと、間に別ページを挟んだユーザーがカウントされず、実態より数字が低く出ます。住宅会社のサイトはトップ→施工事例→フォーム、のように寄り道するのが普通なので、間接で組んだほうが実態に合います。
期間は最低でも過去30日を取ります。フォーム送信は絶対数が少ないので、1週間だと数字が揺れて判断できません。
手順③:どのステップで何%落ちているかを読む
ファネル探索の階段グラフには、各ステップの残存率(%)が表示されます。ここを読み解くのが本題です。

住宅会社のサイトの実際の割合はサイト構成で大きく変わりますが、離脱が多い場所ごとに次に直す1手はほぼ決まっています。
| どこで落ちているか | 何が問題か | 次に直す1手 | |---|---|---| | ①→②で大きく落ちる | フォームまで導線が届いていない | CVボタンの位置・数・文言、ヘッダー固定など | | ②→③で大きく落ちる | フォームを開いたが入り始めない | 項目数・見た目の圧・ファーストビューの説明 | | ③→④で大きく落ちる | 書き始めたが送信までいけない | 必須項目・入力エラー・送信ボタンの位置 |
「反響が少ない」を1つの問題として抱えるのではなく、3つの別々の問題として切り分ける——これがGA4で見える化することのいちばんの効きどころです。切り分けができれば、限られた工数をどこに投下するかで迷わなくなります。
手順④:完了率が改善したときのインパクトを試算する
離脱ポイントが特定できたら、そこを直したときに送信数がどのくらい変わるかを、あらかじめ経営者と共有しておきます。
たとえば、②→③の入力開始率が現在30%だとします。ここを50%まで引き上げると、送信数は約1.7倍になります(他のステップの数字が変わらない前提)。③→④の送信率を20%から40%に上げるだけでも、送信数は2倍になります。

この試算があるかないかで、社内での優先順位づけの説得力が変わります。「感覚で減らせそうな項目を減らす」ではなく、「このステップを直せば送信数がおよそ2倍になる見込みだから、今月はここに時間を使う」という判断ができるようになります。
拡張計測が取れないときの3つの回避策
手順①で `form_start` と `form_submit` が取れなかった場合の回避策を、実務でよく使う順に並べます。
回避策①:サンクスページの `page_view` を送信完了の代替にする
送信後にサンクスページ(`/contact/thanks/` など)へページ遷移する仕様なら、そのURLの `page_view` を「送信完了」の代わりに使えます。多くの住宅会社のサイトはこの構成なので、拡張計測が取れなくても送信数だけは確実に拾えます。
ファネル探索のステップ④を「ページパス = `/contact/thanks/`」に置き換えるだけで、ステップ①→②→④の3段階は測れる状態になります(③の入力開始は取れないままですが、送信数の推移と離脱の絶対量は分かります)。
回避策②:GTM(Googleタグマネージャー)でカスタムトリガーを設定する
より正確に取りたい場合は、GTMで「送信ボタンのクリック」を独自トリガーとして拾い、`form_submit` を強制的に発火させる方法があります。JavaScriptで独自実装されたフォームやSPA構成でも、要素のクラス名やIDでトリガーを組めば発火させられます(アユダンテ)。
ただしGTMのカスタムトリガーはサイト側の実装に依存するため、フォームのHTML構造が変わると計測が突然止まるリスクがあります。実装したら「トリガーが発火する条件」をメモとして残し、サイトを触る担当者と共有しておくことをおすすめします。
回避策③:外部フォーム埋め込みは、送信後の遷移先URLで拾う
Googleフォームやformrunなど外部サービスを埋め込んでいる場合、フォーム内部の操作は親サイトから見えません。送信後に自社サイトのサンクスページへリダイレクトさせる設定(多くの外部フォームサービスにこの機能があります)を入れて、そのURLへの `page_view` で送信数を拾います。
落とし穴3つ
落とし穴①:`form_submit` とサンクスページ `page_view` を両方コンバージョンに登録して二重計上
`form_submit` が発火するフォームで、さらにサンクスページの `page_view` も送信完了のキーイベント(旧コンバージョン)に登録すると、送信1回で2件カウントされます。片方をキーイベントに、もう片方はバックアップの検知用として残す、と決めておくのが型です。
落とし穴②:`form_start` は「セッションで初回のみ」の仕様を忘れる
`form_start` は、同じユーザーが同じセッション中に何度もフォームを触っても、最初の1回しか発火しません。「入力を始めたけど送信していない人」の実数を追いかけたいときに、`form_start` の数だけで議論しないよう注意します。あくまでもファネルの1ステップとして、他のステップと比率で読みます。
落とし穴③:ファネルを設定した直後の1週間で判断してしまう
フォーム送信は絶対数が少ないので、1週間の数字は日ごとの揺れが大きく、そのまま結論に持っていくと「たまたまその週に離脱が多かった」を施策の効果と誤読します。最低30日、できれば60日分のデータでトレンドを見てから、直す場所を決めるのが安全です。
まとめ:4ステップに分解できれば、直す順番は自動で決まる
| ステップ | 見るサイン | 効く打ち手 | |---|---|---| | ①サイト訪問 | 訪問数の絶対量 | 集客チャネル(SEO・広告・SNS) | | ①→② | フォームページへの到達率 | CVボタンの位置・数・文言 | | ②→③ | フォーム到達後の入力開始率(`form_start`) | 項目数・ファーストビューの説明 | | ③→④ | 入力開始後の送信完了率(`form_submit`) | 必須項目・入力エラー・送信ボタン |
「反響が少ない」を1つの問題として抱えないこと。これがGA4でフォーム離脱を可視化することの本質です。3つの別々の問題に切り分けられれば、限られた工数と予算をどこに投下するかで迷わなくなります。
GA4計測改修そのものを前後で比較したい場合の見方は、GA4計測改修の前後で何が変わるのかで整理しています。毎月の運用でこの4ステップをA4・1枚に落とすやり方は、月次でみるべき指標5つ+レポートテンプレを参照してください。
自社サイトの資料請求フォームがどこで何%落ちているかを一度切り分けたいという場合は、下記からご相談ください。現状のGA4設定を確認したうえで、4ステップのファネルを組み、次に直す1箇所まで一緒に決めます。
この記事を書いた人
Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)
上級ウェブ解析士 / 御縁 GROWTH 代表
新潟の住宅会社・工務店を中心に、GA4計測の設計からAI検索(GEO)対策、サイト制作、公式LINE構築までを支援しています。
関連記事


