完成図書の目次を、着工前に決めておく方法

完成図書の目次1枚から6本の光の帯(発注図・特記仕様/打合せ簿/施工計画書/完成図/工事写真/その他)が伸びて、右端で1つの完成図書に集約されていく構造の抽象イメージ

御縁 GROWTH ロゴ

「竣工の1週間前になると、うちの所長がまた泊まり込んでるんですよ。完成図書を作っているらしくて」。ある工事部長との話です。

私は22歳から一般土木の施工管理、26歳からは専門業種の技術職として、通算22年ずっと現場側にいました。所長として現場を持っていたときも、完成図書を自分で綴じて発注者へ持ち込んでいた側です。いまはその実務を土台に、AIエキスパートとして現場事務所のバックオフィスをAI化する支援をしています。

その立場から言えるのは、竣工前1週間に書類が集中するのは、書類の量が多いからではなく、「完成図書の目次が着工前に無いから」だということです。目次が無いまま12ヶ月走ってしまうと、竣工の直前になって初めて「何を集めればいいのか」の全体像に向き合うことになります。

この記事では、完成図書の目次を着工前に決めておく方法を、国交省の電子納品要領の6つのフォルダを土台にして整理します。あわせて、施工中に少しずつ埋めていく運用の型と、所長側に必ず残す判断の線引きも書きます。

完成図書の目次1枚から6本の光の帯(発注図・特記仕様/打合せ簿/施工計画書/完成図/工事写真/その他)が伸びて、右端で1つの完成図書に集約されていく構造の抽象イメージ

1. 「竣工前に書類が集中する」の正体

現場を長くやってきた人ほど、竣工前の泊まり込みは完成図書のせい、という感覚を持っていると思います。ただ、その中身をもう少し正確に言うと、次の3つに分かれます。

  • 本当に竣工前にしか作れないもの(完成図の最終版・引渡書類・完成報告書など)
  • 施工中に少しずつ揃えられるはずだったのに、竣工前にまとめて作り直しているもの(打合せ簿の整理・工事写真の分類・出来高書類の並び直しなど)
  • どこに何があるかを探しているだけの時間(過去の議事メモ・変更協議の合意・仕様の変更履歴の突合)

本当に竣工前にしか作れないものは、実は全体の一部にすぎません。残りの多くは「施工中に少しずつ揃えられたはずのもの」と「探している時間」です。

書類作成に手戻りが多くなる背景は業界でも指摘されていて、施工の神様の「工事完成報告書」を作成できない受注者が激増中! では、他業務の兼務と技術者不足が重なって完成報告書そのものが仕上がらない現場が増えている、と書かれています。国土交通省も令和6年3月の書類スリム化で、追加提出資料の抑制と書式の統一を進めています。制度側もこの状況を認識した上で動いています。

つまり、竣工前の泊まり込みは所長個人の段取り力の問題ではなく、「何を集めるか」の目次が着工前に手元に無いことが原因になっている、ということです。

2. 完成図書は「6つの箱」で説明できる

目次を作るときの土台は、公共工事だとすでに国側で決まっています。国土交通省の工事完成図書の電子納品等要領(令和5年3月) では、電子成果品を 6つのフォルダで構成することが定められています。

  • DRAWINGS(発注図・特記仕様書など、契約時に発注者から受け取る図面と仕様)
  • MEET(打合せ簿)
  • PLAN(施工計画書)
  • DRAWINGF(完成図)
  • PHOTO(工事写真)
  • OTHRS(その他の書類。出来高報告書・試験成績書・引渡書類など)

この6つの箱の枠は、着工前からすでに決まっている、というのがまず押さえどころです。フォルダの名前と役割は12ヶ月経っても変わりません。変わるのは、それぞれの箱の中に何が積み上がっていくか、それだけです。

紙で綴じる場合も、この6区分をそのまま章立ての骨格にできます。広島県の完成図書の作成について(令和6年3月改正) では、提出書類・打合せ関係書類・施工計画書・工事写真などの区分でファイル分けする方針が示されていて、電子納品の6区分とほぼ同じ骨格になっています。

現場事務所の打合せテーブルで、現場所長と事務担当が完成図書の目次案を一緒に指差しながら着工前に埋めている風景

自治体ごとに書式の細部は違いますが、「6つの箱に分かれている」という骨格そのものはほぼ共通です。目次を最初から手作りする必要はなく、この6つの箱にそのまま名前をつけて、着工前に1枚の紙にまとめておけばそれが完成図書の目次になります。

3. 着工前に決められることは、目次のうちの何割か

「目次が着工前に無いから竣工前に集中する」と書きましたが、着工前に決められるのは目次のうちの何割くらいかを先に整理しておきます。ここを勘違いすると「全部着工前に決めなければいけない」という誤解になって、逆に着工前が動かなくなります。

着工前に決められる(決めるべき)こと

  • 6つの箱の名前と順番(電子納品要領・自治体書式に合わせて確定)
  • 各箱の担当(打合せ簿は所長/工事写真は事務担当/施工計画書は所長など、社内での担当割り)
  • 保管場所(紙で綴じるバインダーの場所/サーバー上のフォルダ名/写真アプリのプロジェクト名)
  • 着手時期(施工計画書は着工から2週間以内/打合せ簿は発議のたび/完成図の下敷きは施工1ヶ月目からなど)
  • 最終確認者(各箱の中身を発注者へ提出する前に、誰が最終確認するか。原則として現場代理人・現場所長)

着工中に決まっていくこと(着工前に確定しない)

  • 各箱の中身の詳細(打合せ簿の1件1件の中身・工事写真の枚数・変更協議の結果)
  • 数字の最終値(出来高の月次数字・数量計算書の最終値)
  • 発注者との個別の運用調整(提出頻度・押印運用・電子納品と紙の並行運用の細部)

つまり、着工前に決めるのは「箱の枠と運用ルール」までで、中身は施工中に埋めていくものです。この線引きが曖昧なまま「詳細まで着工前に決めよう」とすると、着工前の準備そのものが重くなって回りません。

4. 目次1枚の作り方 —— A4横1枚に収める

実務でおすすめなのは、A4横1枚に完成図書の目次を収めることです。1枚に収めると、着工前打合せで発注者の監督員に見せることも、社内で若手にわたすことも、途中で振り返ることも、全部同じ紙でできるようになります。

紙のイメージは次のとおりです。

  • 見出し行: 工事名/契約番号/着工年月日/竣工予定年月日/現場代理人氏名
  • 6行の本表: 上から順に「①発注図・特記仕様」「②打合せ簿」「③施工計画書」「④完成図」「⑤工事写真」「⑥その他」
  • 各行の右側の記入欄4つ: 担当/保管場所/着手時期/最終確認者

これだけです。中身の詳細は書きません。中身を書き始めると1枚に収まらなくなって、結局誰も見ない資料になります。

各行の中に、以下のようなこの現場での運用メモを1〜2行だけ添えます。

  • ①発注図・特記仕様: 契約時に受領(担当=所長)/原本サーバー保管・作業用は現場事務所コピー
  • ②打合せ簿: 発議のたびに月次で綴じる(担当=所長/記入は事務担当)/サーバーのMEETフォルダ
  • ③施工計画書: 着工2週間以内に初版/変更のたびに版管理(担当=所長)/国交省 関東地方整備局の記載項目参考例 の15項目を骨格に
  • ④完成図: 施工1ヶ月目から下敷きを更新(担当=所長/CAD作業は外注可)/竣工1ヶ月前に監督員へ最終確認
  • ⑤工事写真: 着工当日から電子小黒板で撮る(担当=事務担当/国交省 デジタル写真管理情報基準 準拠)/月次で整理
  • ⑥その他: 試験成績書・出来高報告書・引渡書類(担当=所長/竣工前1ヶ月から集約)
「完成図書 目次」と印字された1枚の紙のクローズアップ。6項目と担当・保管場所・着手時期・最終確認の記入欄が並ぶ

この1枚を、着工前打合せの資料の1枚として発注者の監督員に提示すると、発注者側の書式・提出方法との細部調整が着工前に済むという副次効果があります。あとから「そのフォルダ名は違う」「その頻度では困る」というやり取りで手戻る場面が減ります。

5. 施工中は「今埋めているのが何番の箱か」だけで運用する

目次1枚が手元にあれば、施工中の書類仕事は「今書いているものが何番の箱に入るか」を1つ決めるだけで回っていくようになります。

例えば、打合せ簿を1件書き終わったら ② のクリアファイルに差す。工事写真を1週間ぶん整理したら ⑤ のフォルダに入れる。試験成績書が届いたら ⑥ のバインダーに綴じる。これだけです。

この運用に切り替わると、次の3つの変化が起きます。

  • 「あとで整理する」という言葉が消える(発生時点で入れる箱が決まっているので、一時置きの必要がなくなる)
  • 探す時間が減る(どの書類がどの箱に入っているかが、目次1枚を見れば分かる)
  • 若手にも渡せる(「これは②に入れて」「これは⑤の8月に入れて」で指示が完結する)
事務担当が6冊の完成図書用クリアファイルのうち1冊に書類を差し込んでいる、施工中の運用スナップ

打合せ簿・工事写真・出来高書類のように発生頻度が高い書類ほど、この運用の効き方が大きいです。逆に、契約時に一度だけ受け取る発注図や特記仕様のような書類は、着工前に1回入れたら以降は動きません。

運用のコツを1つだけ挙げるとすれば、書類が発生した瞬間にその場で箱番号を書き込むことです。打合せ簿の右上に「②」と鉛筆で書く、写真整理フォルダのフォルダ名の頭に「⑤」を付ける。これだけで、後で分類し直す作業がなくなります。

6. 目次埋まり率の目安 —— 竣工前2週間で残るのは「まとめ作業」だけ

目次を着工前に決めて、施工中に少しずつ埋めていくと、引渡しの時点までの目次埋まり率のイメージはおおむね次のようになります(当事者体感の目安であり、現場ごとに差はあります)。

完成図書の目次埋まり率の目安(着工前0%/施工3ヶ月30%/施工6ヶ月60%/竣工1ヶ月前80%/引渡し95%)。目次を着工前に決めておくと、施工中に少しずつ埋まっていくイメージ
  • 着工前: 10%(目次自体は完成/発注図・特記仕様は入っている)
  • 施工3ヶ月: 30%(打合せ簿・施工計画書・工事写真が積み上がり始める)
  • 施工6ヶ月: 60%(打合せ簿と工事写真が半分程度、施工計画書の変更版も含む)
  • 竣工1ヶ月前: 80%(完成図の下敷きと出来高書類が入る)
  • 引渡し: 95%(完成図の最終版・完成報告書・引渡書類が最後に入る)

残りの5%が、本当に竣工前にしか作れないものです。完成報告書の総括ページ・完成図の最終版・引渡書類の押印一式など、他の書類が揃わないと書けない性質のものが残ります。

この5%は避けられません。ただ、目次があると 5%の作業だけに集中できるようになります。目次が無い場合の竣工前は、この5%と一緒に、施工中に本来揃っていたはずの60〜80%の並び直しが同時に来ます。ここが泊まり込みの正体です。

7. 目次があっても、所長側に必ず残ることが3つある

目次を作って施工中の運用に落としても、所長側に必ず残る判断が3つあります。目次と運用の型があっても、ここは事務担当にもAIにも動かせません。

1つ目: 目次1枚の最終確定

目次のたたき台は事務担当が作っても構いません。ただし、この現場の6つの箱の担当・保管場所・着手時期・最終確認者を最後に判断して1枚に確定するのは、現場代理人・現場所長本人です。ここを他人に任せると、施工中に「そんなつもりで書いていない」というズレが必ず出ます。

2つ目: 発注者との個別の運用調整

書式そのものは書式で決まっていても、この現場での運用の細部(提出頻度・押印の順序・電子と紙の並行の仕方)は、発注者の監督員との個別のやり取りでしか決まりません。事務担当が下書きを作ることはできますが、監督員と話して合意するのは所長側の仕事です。ここを外に出すと偽装請負や配置技術者専任義務との抵触のリスクが立ちます。

3つ目: 各箱の中身の最終確認と提出判断

打合せ簿を綴じる作業や工事写真を整理する作業は事務担当が回してくれます。ただし、その中身を発注者へ提出してよいかの最終判断は、常に所長側に残ります。数字の最終値・現場固有情報の解釈・出せる範囲の判断は、22年やってきた経験と、この現場の実務を知っている人間にしか下せません。

AIも事務担当も「箱の枠に沿って書類を積んでいく作業」までは一緒に走れます。ただ、目次の最終確定・発注者との合意・提出判断は、現場代理人・現場所長の手に必ず残ります。ここが崩れると、書類は早く仕上がっても、契約と法令のほうが崩れます。

8. 明日30分でできる最初の一手

いま目次が無いまま走っている現場でも、明日30分あれば最初の一手は打てます。

手順

1. A4横1枚に、6行の表を描く(見出し行+6箱+担当・保管場所・着手時期・最終確認者の4列。所要5分) 2. 今の現場で決まっている担当と保管場所を、思い出せる範囲で埋める(分からない欄は空欄のまま。所要10分) 3. 空欄になった行を1つ選び、直近の週次会議の議題に上げる(誰が担当か・どこに保管するか・いつから着手するかを社内で決める。所要5分) 4. 翌日以降、発生した書類の右上に箱番号(①〜⑥)を鉛筆で書く運用を始める(所要0分・その場で書くだけ)

この4手だけで、竣工前の1週間泊まり込みの原因の半分は前倒しで解消される、というのが実務で見てきた感覚です。全部を一気に整えようとしなくても構いません。

---

この記事の関連記事

現場事務所の書類仕事を外に出すかを検討している方向けの相談は、下のフォームからお問い合わせください。22年現場に立ってきた技術職が、AIエキスパートとして現場事務所のバックオフィスをAI化する視点で、御社の現場に合う形をご一緒に考えます。

Masaharu Ishimoto

この記事を書いた人

Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)

建設実務22年 / AIエキスパート

22歳から一般土木の施工管理、26歳からは専門業種の技術職として現場に立ち続けて22年。その実務経験を土台に、いまはAIエージェントを駆使して現場事務所のバックオフィス業務をAI化する支援をしています。

🎬 プライベート
X
TikTok
Instagram
💼 お仕事
Instagram
Facebook
▶ YouTube
チャンネル(準備中)

☀️ 現場の書類、抜けがないか一緒に点検しませんか?

着工前から完成時までの提出物を、実務経験のある担当者が無料で棚卸しします。

無料相談・診断はこちら

お電話 090-1888-7622(平日9:00〜18:00)/ 公式LINEで相談