私はこのブログを、毎晩AIに書かせています。
今晩で開始から43日目、公開済みが32本。企画・執筆・画像生成・予約投稿・SNS投稿文まで、朝9時公開の直前まで自動で流れる仕組みで運用しています。
そのなかで、「AIに任せて成果物が出た仕事」と「任せると必ず事故る仕事」は、はっきり分かれてきました。
今日はその線引きを、実際にやってみて分かった6つとして書きます。判断基準の一般論ではなく、自分の会社で試して当たり外れが出た仕分けです。経営者としてAIを社内に入れる順序を決めるときの、叩き台になれば。
目次

1. なぜ「6つ」で整理したか
一般論としては、AIに向く仕事と向かない仕事を仕分けるための問いはいくつか提案されています。たとえば「やり直しがきくか/正解に幅があるか/材料が手元にあるか/良し悪しを判断できるか」の4つで判定する整理が、実務向けにはよく紹介されています(AI業務効率化はどの業務から?渡せる仕事と渡せない仕事の見分け方 — Tradivance)。
考え方としては正しいのですが、自分でやってみると「4つの問いに当てはめれば決まる」というほど単純ではない、というのが実感でした。同じ業務の中でも、任せてよい部分と任せられない部分が線1本で分かれます。
だから私は、業務そのものではなく「AIに何を渡していたか」で6つに切り直しました。前半3つは任せて成果物が出た渡し方、後半3つは任せて事故った渡し方です。

2. 任せてよかった3つ
2-1. 下書きの整え(構成・章立て・見出し順)
いちばん最初に効いたのが、記事の下書きの整えでした。
たとえば「変更協議資料を書くときの中身」というテーマで書くとき、私は話したい要素を箇条書きで先に出します。「変更事由の3区分/変更内容の対比/概算の内訳/通っても通らない落とし穴」といった具合です。この5〜10個の要素を渡して、「これを読み手が迷わない順で並べ直して」と頼むと、見出しの並びと章の切れ目がすぐ返ってきます。
これは事故りませんでした。理由は、元の材料(何を書きたいか)が私の側にあって、AIは並び順を整えているだけだからです。順序が微妙なときは私が入れ替えますが、たたき台があるのと白紙から並べるのでは、かかる時間がまるで違います。
具体的にどれくらい違うかと言うと、以前は1本の記事の構成を組むのに30分〜1時間かかっていたのが、いまは10分程度で収まっています。構成を組む工程を短くできると、材料集めと本文の言い回しに時間を残せる。これが大きい。
2-2. 調査結果の要約
Web検索で拾った3〜5本の記事を貼り付けて、「この中から、住宅会社の広報が気にする数字だけ抜き出して」と頼むのも、事故りませんでした。
これも、元になる正解が別の場所にある仕事です。AIは記事の中に書かれている数字を拾い出しているだけで、数字そのものを生み出してはいません。だから間違いにくい。
ただし、要約から抜き出した数字をそのまま本文に貼るのは危ない、というのが実測での注意点です。要約は「元の記事に書かれていた」ことを保証するだけで、「元の記事が正しかった」ことは保証しません。だから私は、要約でざっくり当たりを付けてから、原典に戻って数字を拾い直す、という2段構えでやっています。
原典に戻る手間が入りますが、「まず一次情報を全部読む」のと「要約を先に読んでから当たりを付ける」のでは、読む本数が半分になります。これも時間の削り方として効きます。
2-3. 別の言い方への置き換え
3つ目は言い換えです。
同じ内容を、「経営者向けに」「現場所長向けに」「もっと短く」「もっと丁寧に」と、宛先や長さを変えて書き直させる仕事は、事故りません。元の意味が正解として存在していて、AIは表現だけ変えているからです。
私は1本の記事のリード文を、毎回3〜4パターン書き直させます。そこから自分が読者として引っかかったものを選ぶ、という使い方をしています。選ぶ材料が3つあるのと1つしかないのでは、選んだ後の納得感が違います。
「別の言い方に置き換える」は、社内文書やお客様への返信の下書きにも同じ形で使えます。1回目の下書きを人が書いて、それを「もう少し柔らかく」「もう少し具体的に」と書き直させる。これも、任せて事故らない渡し方です。
3. 任せられなかった3つ
ここから後半です。業界解説の記事では「AIが得意」とされていることでも、自分でやってみると事故る渡し方がありました。3つ書きます。
3-1. 数字の最終値
これは前回の記事(AIに任せて事故りかけた話 — 数字と固有名詞は人が確認する)でもそのまま書きましたが、数字の最終値だけは、最後に人が見ないと事故ります。
自分の経歴の年数(20年と22年の混在)、氏名の表記ゆれ(雅治・正治・増本)、実測データの集計値、料金の考え方に出てくる金額の桁——このあたりは、AIに書かせるとどこかで必ずずれます。
なぜ数字だけがこう抜けるのか。私が2件の事故を並べて考えた結論は、「もっともらしく書ける場所」だけが、もっともらしい候補にすり替わる、というものでした。文法チェックには引っかからず、AI自身も「これは矛盾している」と気づく手がかりを持ちません。
だから対策は難しくありません。「この記事の数字と固有名詞だけ、拾い読みで照合する時間」を、書き終わったあとで別に取ります。3分もかかりませんが、これを省いた8本で21箇所の年数混在と3件の氏名誤字が起きました。数字の最終値をAIに任せていい仕事は、いまのところ1つも見つかっていません。

3-2. 判断そのもの
2つ目は、**「複数の選択肢のうちどれか一つを選ぶ」判断——これはAIに任せられませんでした。
たとえば、記事の書き終わりで「これは公開してよいか、下書きに戻すか」を決める場面。AI側にも「この記事は公開可」と言わせることは技術的にできますが、そう答えたときの責任がAI側に何もない。あとで内容に問題が見つかっても、AIは謝りません。損失は全部会社側に残ります。
同じ理由で、私が任せない判断はこのあたりです。
- 記事を予約公開するか、下書きに戻すか
- お受けする相談か、お断りする相談か
- 関連記事に何を選ぶか(読者の動線設計)
- 料金の考え方をどこまで明かすか
これらは、正解が1つに決まらず、選び方に会社の方針が乗っている仕事です。方針を選ぶのは経営側の役割で、AIに委ねると、選ばれた結果が偶然会社の方針と合致しているかどうかを、後から人が検証することになります。それなら、最初から人が選んだほうが早い。
経済産業省が2026年3月に公表した「AI事業者ガイドライン 第1.2版」でも、AIの出力を評価の参考にする場合は人間による合理的な判断のもとで説明責任を果たすことが求められています(AI事業者ガイドライン 第1.2版 — 総務省・経済産業省)。判断そのものを人が握るというのは、リスク管理ではなく、AIの使い方の設計そのものとして求められている、と私は読みました。
3-3. 相手固有の文脈
3つ目は相手固有の文脈です。これがいちばん、最初は分かりにくかった。
たとえば「初回相談で聞き出したその会社の状況」を踏まえて次の提案を書く、という仕事。AIには手元にその会社の状況がありません。「こういう会社です」と説明しても、説明した範囲を超えた背景——決算の締まり方、社内の力学、過去の失敗、代表の口癖——には手が届きません。
私はこれを最初、「もっと詳しく説明すれば済む」と思っていました。ところが、詳しく説明しようとすると、説明すること自体に時間がかかりすぎて、自分で書いたほうが早い。ここで、「AIに文脈を渡す時間」と「自分で書き上げる時間」を天秤にかけて、後者が短いなら任せない、というシンプルな線引きに落ち着きました。
具体的には、次のような仕事は任せませんでした。
- 特定のクライアント向けの提案の骨子(会社ごとの事情に踏み込む)
- 相談の一次ヒアリングの解釈(相手の言い回しの裏を読む)
- 業界特有の言い回しの選び方(現場側の人にしか通じない微妙なニュアンス)
一方、「相手固有の文脈が要らない部分」——たとえば見積書の体裁や、お客様への定型的な返信の下書き——は、任せて事故りません。相手が違っても書式が同じ仕事は、AIに向いています。

4. 6つを表にすると
言葉で書いた6つを、いちど並べて見比べます。
| 渡し方 | 任せた結果 | 判定の理由 | |---|---|---| | 下書きの整え | 事故らない | 元の材料が人の側にある | | 調査の要約 | 事故らない | 元の正解が原典側にある | | 言い換え | 事故らない | 元の意味が正解として決まっている | | 数字の最終値 | 必ず事故る | 「もっともらしい候補」にすり替わる | | 判断そのもの | 必ず事故る | 選んだ結果の責任がAI側に無い | | 相手固有の文脈 | 事故るか、任せる時間より書く時間のほうが短い | AIの手元に相手の背景が無い |
前半3つの共通点は、「元になる正解が別のどこかにある」。後半3つの共通点は、「元になる正解が、AIの中にも人が渡した情報の中にも無い」。
これがいまの私の、6つの線引きです。
5. この線引きを、業界の一般整理と重ねてみる
参考までに、業界解説として整理されている12の事務作業の判定を横に置きます。中小企業の事務作業を「丸ごと任せる/たたき台まで任せる/ソフト機能に任せる/人が判断する」の4分類で仕分けた例です(AIで業務効率化、結局どの作業が消えるのか — 中小企業×AI活用)。

分類の割合を見ると、「丸ごと任せる」は12業務のうち3つにとどまり、残り9つは何らかの形で人が関わる設計になっています。「人が判断する」領域は必ず残るというのは、事務作業全体に共通する構造のようです。
私の6つの線引きを、この4分類の考え方に重ねてみると、こう読めます。
- 前半3つ(下書き・要約・言い換え)=「たたき台まで任せる」の範囲
- 後半3つ(数字・判断・相手固有)=「人が判断する」の範囲
つまり、私の実測で分かった線引きは、業界解説と大枠では一致していたということです。ただし、業界の記事を先に読んで「そうか、これは任せていい・これはダメ」と信じるより、小さな仕事で試して当たり外れを一度自分で見たほうが、社内で説明するときに強い。これも経験値としての実感です。
6. 経営者の側から見たときの、渡す順序
読んでくださっているのは、社内でAIを入れるか、あるいはすでに入れて次にどう回すかを判断する立場の方だと思います。
この6つの線引きを、経営判断に落とすと、渡す順序はこうなります。
1. まず、「元になる正解が別のどこかにある」仕事から渡す。下書き・要約・言い換えの3つは、事故が出にくく効果も見えやすい入口です 2. 次に、その仕事の「数字と固有名詞と判断」だけを人が見る時間を、別に設ける。この3分〜5分の時間を省くと、必ずどこかで事故が出ます 3. 相手固有の文脈が要る仕事は、渡す前に「渡す時間と自分で書く時間」を天秤にかける。短い方を選ぶだけで、大きな失敗は避けられます
これは、AIを使わないうちからでも設計できます。むしろ、社内でAIを入れる前に、この順序を先に決めておいたほうが定着します。
前回の記事(AIを業務に入れるとき、最初に渡すべき仕事の選び方)で書いた「最初に渡す仕事の選び方」の、具体的な内訳がこの6つになると思ってください。
7. まだ試せていない領域
正直に書くと、この6つはまだ私の会社の実測での話です。業種によっては別の線引きがあるはずで、たとえば次の領域はまだ試せていません。
- 金額の見積もり作成——見積書の体裁は任せられそうだが、単価表と過去実績をどう渡すかで結果が変わる
- 社内のマニュアル作成——書き出し済みの手順があれば要約は任せられそうだが、暗黙知の言語化は不明
- 顧客との交渉のたたき台——相手固有の文脈が強く出るため、渡し方が難しそう
これらは、依頼を受けて実際に触ったときに、経過報告シリーズ(毎日1本・AI執筆でSEOは上がるのか 第2回)のなかで書き足していきます。「試したことしか書かない」というルールは、A線の記事で自分に課しているものなので、ここは焦らずやります。
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AIに何を任せるかは、業務ではなく渡し方で決まります。 「この仕事はAI向き」ではなく、「この仕事の、この部分の、この形の渡し方は事故らない」と、細かく切って渡す。それが1ヶ月半やってみた実感です。
社内でAIを入れる方の、順序を決める材料になれば十分です。
この記事を書いた人
Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)
AIエキスパート / 現場実務22年
22年間ずっと現場側で実務をしてきた人間が、いまはAIエージェントを毎日の業務に組み込んで運用しています。うまくいったことも、任せて失敗したことも、そのまま書いています。
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