AIエージェントに毎晩ブログを書かせる仕組みで、初期にやめた3つの設計判断

深夜の無人のオフィスで、ノートパソコンだけがブログ執筆と予約投稿のログを表示している場面

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このブログは、毎晩AIエージェントが1本記事を書き、翌朝9時に予約公開されます。私は朝それを読んで、マズければ9時前に取り消す、という運用を続けています。

始めたのは2026年の7月下旬。今日でちょうど60日を超えたところです。

60日のあいだに、私は「便利そうだから入れたけれど、続けるうちに全部やめた設計判断」が3つあります。

今日は、その3つがなぜ生まれて、どこで折れて、今どうしているかを、そのまま書きます。AIを業務に入れようとしている経営者の方に、同じ穴を踏んでほしくないからです。

深夜の無人のオフィスで、ノートパソコンだけがブログ執筆と予約投稿のログを表示している場面

1. なぜ「やめた設計判断」を書くのか

AIエージェントに業務を任せる話題は、2026年に入って一気に増えました。半年で暴走が疑われる報告が約5倍に増えたという調査もあります(AIエージェントの失敗事例4つ — AINOW)。

私自身も、自社のブログを実験台にして、この半年で運用の中でしか気づけない設計ミスを3つ踏みました。

大切なのは、最初の設計が悪かったこと自体ではありません。悪いのは、「あとで直せばいい」と思って動かし続けてしまうことです。

AIエージェント導入で失敗する企業の共通課題として、多くの解説記事が「導入設計と運用設計の不足」を挙げています(AIエージェント導入の失敗5パターン — Uravation、中小企業のAI導入で失敗する理由 — 中小企業AI導入ナビ)。私が踏んだ3つの穴も、その通りでした。

2. やめた① 次の1本を「★印」で指す運用(★ポインタ運用)

最初にやったのは、次に書くべき記事を「★」で指しておく、という運用でした。

どう動いていたか

企画一覧のファイルに、記事案がたくさん並んでいます。その中の1つに「★」を付けておくと、夜間の仕組みがそれを見つけて、その1本を書きます。書き終えたら次の企画に「★」を移す —— という設計です。

一見すると自然です。「次はこれ」を人間が矢印で指しておくだけなので、直感的でした。

何が折れたか

問題は、企画のファイルが4つに増えたときに起きました。建設・住宅・AI・サービスの4ライン運用に切り替えた瞬間、「★」が4個に増え、どのファイルの★を優先するかという別のルールが必要になりました。

  • 前日書き終えたのはどのラインか?
  • 曜日はどのライン?
  • 明日書き始める前に、どのファイルの★を進めるか?

このメタルールを毎晩AIに正しく判断させ続けるのは、思ったより難しい仕事でした。ある晩、AIは「どの★を進めるべきか」の判断を1文字ずれで解釈し、以降は誰も次を書かなくなりました。

結果、8晩連続で1本も上がりませんでした。朝、9時の枠が空のままメールが飛んでくるのを、8回見ました。

どう直したか

やめる判断は早めでした。7月下旬、「★を探すのをやめて、日付だけ見る」と決めました。今は次のようになっています。

  • 企画一覧の各行に「投稿予定日」だけを書いておく
  • 夜間の仕組みは「企画のうち、投稿予定日が最も早い行」を選ぶ、それだけ
  • ★は使わない

判断のロジックが1行のルールに減った瞬間、8晩空振り問題は消えました。

上=乱雑な★印の付いたメモ、下=予定日と記事名だけが並んだ静かな一覧、という2枚の紙の対比

これはAIエージェントの設計としては、SREの本番運用で使うガードレールパターンや、ハーネスエンジニアリングで言われている、「判断を減らして、状態を1つに束ねる」という発想と重なる話でした。

経営者の実務で言い換えると、AIに毎晩なにか判断させるルールは、社員の当番表と同じで、手数が多いほど回らなくなります。「手が空いた人がやる」という決め方の会社は、たいてい誰もやりません。

3. やめた② 1晩に何本もまとめて公開する設計(週2本→1日1本へ)

2つ目にやめたのは、1晩に複数本を公開できる設計でした。

どう動いていたか

最初、私は「週2本」というペースで設計しました。夜間の仕組みには「1晩に最大2本まで書いてよい」というオプションを付けていました。ネタが溜まったら一気に消化するつもりでした。

何が折れたか

1晩に2本上げようとした最初の日、1本目でリサーチ用のAPIが認証切れしていたのに気づかず、そのまま2本目も同じ失敗でこけました。翌朝9時、記事は2本とも上がっていませんでした。

もっと怖かったのはその次の日です。前日の分を取り戻そうと「1晩に3本」に一時的に上げた晩、1本の設定ミスが3本ぶんに拡散しました。3本とも、著者名の年数の記述に同じミスが入っていました。

暴走のダメージは、本数に比例するのではなく、掛け算で効きます(AIエージェント安全設計 — Zenn)。1本の間違いを1本で止めるのと、それが3本に伝播するのとでは、修復工数がまるで違いました。

どう直したか

やめた後は、次のシンプルな2つに戻しました。

  • 1日1本までを、コード側でハードキャップとして持たせる
  • そのキャップは環境変数で外せるが、自動処理からは外せないよう仕組み側で締めておく

今は、「たくさん書ける晩」でも1本しか書かない、という思想で固定しました。溜まったネタは、翌日以降の予定日に順番に並べます。

1日1枚の付箋しか貼らない週間カレンダーに、2枚目を貼ろうとした手を静かに押さえている場面

これは、生成AIのガードレール設計でよく言われる「破壊的操作の物理的な遮断」の発想に近い話です。プロンプトで「やりすぎないで」とお願いするのではなく、そもそも呼べない構造を作っておく。

経営者の実務で言い換えると、AIを社内に入れるときも同じです。「気をつけて使ってね」で運用するより、そもそも一度に多くを動かせない仕組みにしておくほうが、事故ったときの被害が小さく済みます。

4. やめた③ 「あとで実例を入れる」プレースホルダ運用

3つ目は、記事本文の中に【ここに実例】と書いた箱を置いておく、という運用でした。

どう動いていたか

AIには、記事の一次情報として「クライアントの事例をあとで代表が入れる」前提で本文を書かせていました。本文の中には【ここに実例】という文字列が仮に置かれ、翌朝、私が実際の事例をそこに埋める、という段取りです。

「AIは骨組み」「人は肉付け」の分業として、当時はこれが正解に見えました。

何が折れたか

始めて数日後、その【ここに実例】が、埋められないまま公開直前まで残っていたことがありました。私が朝バタバタしていて、埋めるのを忘れた日です。

幸い、9時前に気づいて公開を取り消しましたが、「あとで埋める」を前提にしたブロックは、埋め忘れが必ず起きる、と分かった瞬間でした。

これは私に限った話ではありません。フォーム設計の解説記事でも、プレースホルダーがラベルの代わりに使われた入力欄では、後で見返したときに何を入れる欄か分からず入力ミスや空欄が発生しやすい、という指摘が繰り返し出てきます。「あとで入れる」箱は、あとで入れられない、という構造は、業種を超えて同じでした。

どう直したか

決めたのは、「そもそも実例なしで完結する記事構成にする」という切り替えでした。

  • 【ここに実例】は本文から消す
  • 代わりに、業界統計・公式ガイドライン・自社の実測を根拠にする
  • クライアントの事例がその記事に本当に必要なときだけ、書く前に明示的に「今回は入れる」と宣言する

この判断で、AIが書いた原稿を、私がそのまま朝読んで、そのまま出すという一発通しの状態に近づきました。

「やめた3つの設計判断」と書かれた紙を挟んで、2人が向かい合って中身を確認している場面

経営者の実務で言い換えると、社員に「あとで直しといて」と依頼した仕事は、たいてい直されません。「あとで」を仕組みから抜くと、AIも人も、ちゃんと動きます。

5. 3つに共通していた「1つの発想」

3つの設計判断は、それぞれ別のところで折れました。しかし、やめた後に振り返ると、共通していた失敗の型は1つだけでした。

「後から直せる」を前提にした設計は、後から直せない。

  • ★ポインタは「次の朝に★を進めればいい」と思っていた → 進めなかった
  • 1晩複数本は「暴走したら止めればいい」と思っていた → 止まらなかった
  • プレースホルダは「朝に埋めればいい」と思っていた → 埋まらなかった

3件とも、運用側の私の意志力に依存する設計でした。意志力は毎日同じ量では出ません。夜遅い、朝忙しい、他の業務に手を取られる。そのときの1回の判断ミスで、翌日の記事が飛ぶ、という構造を作ってはいけなかった、というのが結論です。

3つの設計判断の、やめる前と後の週次書き直し件数の指数比較グラフ

3つの手直し後、同じ運用の週に発生する書き直し・落穂拾いの件数は、指数で見て1割以下になりました。1週間の作業の中で、朝の緊急対応に使う時間が消え、その時間が新しい企画のリサーチに回るようになったのが、いちばん大きな変化でした。

6. 経営者にとっての翻訳 —— AIを業務に入れるときの3つの問い

私の話は「毎晩ブログを書く仕組み」ですが、同じ穴は、社内でAIを使い始める会社ならどこでも踏みます。

もしこれからAIを業務に入れようとしているなら、私からは3つの問いをお渡ししたいです。

  • その運用は「毎晩、あなたが正しく判断できる前提」になっていないか? —— 意志力に頼らない仕組みに寄せる
  • その運用は「暴走したら止められる前提」になっていないか? —— そもそも一度にたくさん動かない設計にする
  • その運用は「後で人が直せる前提」になっていないか? —— 後で直す箱を、最初から作らない

AIの設計でいちばん強い判断は、「何を入れるか」ではなく「何をやめるか」でした。

私は建設現場の実務を22年やってきて、6年目からずっと現場は「決めごとが少ないほど回る」という肌感覚を持っています。AIの運用も、まったく同じでした。

御縁では、AIを業務にどう入れるかの入口の1〜3日を、経営者の方と一緒に整理するご相談をお受けしています。私が自社で踏んだ穴も、そのまま共有します。「うちは何からやめておくべきか」を一緒に見ていただければと思います。

Masaharu Ishimoto

この記事を書いた人

Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)

AIエキスパート / 現場実務22年

22年間ずっと現場側で実務をしてきた人間が、いまはAIエージェントを毎日の業務に組み込んで運用しています。うまくいったことも、任せて失敗したことも、そのまま書いています。

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毎日AIに使う3つの型 —— プロンプトの土台・チェック手順・引き継ぎメモ

手元のメモを見ながら、AIに毎回渡す土台の文章を書き足している場面

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「プロンプトの書き方」を検索する経営者が、この1年で本当に増えました。

私は自社のブログをAIに書かせて毎晩1本、翌朝9時に自動で公開する運用を続けています。今日でちょうど43日目、公開本数は32本を超えたところです。

その中で、毎日必ず使い続けている"型"は、たった3つしか残っていません。凝ったプロンプトの書き方ではなく、この3つを最初に決めておくと、AI活用は少しずつ会社に積み上がります。

今日は、その3つの型それぞれの中身と、途中でうまくいかなかった話を、そのまま書きます。

手元のメモを見ながら、AIに毎回渡す土台の文章を書き足している場面

1. 「良いプロンプトを毎回考える」は続かない

まず、業界の潮目がすでに変わっています。

2026年に入ってから、AIの世界では「プロンプトエンジニアリング」から「コンテキストエンジニアリング」へ、という言い方をよく見るようになりました(コンテキストエンジニアリングとは? — Salesforceブログ、プロンプトエンジニアリングは終わった? — cloco)。

難しそうな言葉ですが、中身はシンプルです。1回のプロンプトを磨くより、AIが仕事するときに「何を知っている状態か」を設計する、というだけの話です(プロンプトエンジニアリングとの違い — Findy Team+)。

私はこれを難しく捉えず、「AIに毎回渡す3枚を決める」という形で運用に落としました。それが以下の3つです。

  • 型1: 土台 —— 毎回一緒に渡す「うちのルール」
  • 型2: チェック —— 生成された後、必ず通す関門
  • 型3: 引き継ぎ —— 昨日から今日のAIへ渡す1枚メモ

順に見ていきます。

2. 型1: プロンプトの土台 —— 毎回一緒に渡す「うちのルール」

1つ目は、AIに何を頼むときも、指示文の前に必ず一緒に貼りつける短い文書です。私はこれを「土台」と呼んでいます。

土台に書くのは、次の4つだけで十分でした。

  • 役割: AIがどんな立場で書くか(例: 建設実務の経験があるライター)
  • 読者: 誰に向かって書くか(例: 中小企業の経営者。ITに明るいとは限らない)
  • NG表現: 使ってはいけない言い回し(例: 「必ず〜になる」「絶対に〜」)
  • 出力の形: 章立て・文字数・段落の長さの目安

2026年のプロンプトの解説記事でも、この「役割・読者・NG・形式」の4要素はほぼ共通して挙げられています(プロンプト設計7原則 — Uravation、プロンプトの書き方完全ガイド — OptiMax)。

机上にA5カードを横一列に3枚並べた俯瞰。左から土台/チェック/引き継ぎ

土台の効き目は、書いた瞬間には出ません。効いてくるのは、同じ土台を10回・20回と貼り続けたあとです。AIが「うちの会社の人」として振る舞い始め、頼み方を短くしても意図がずれなくなります。

失敗した話も1つ書いておきます。運用を始めた最初の頃、私は土台を欲張って長く書きすぎました。禁止表現を20個、注意事項を15個並べたら、AIは長い注意書きの後半をだんだん無視するようになりました。

土台はA4半分に収まる長さにする、というのが今の私の目安です。長くしたくなったら、それは土台ではなく、次に説明する「チェック手順」に回します。

3. 型2: チェック手順 —— 生成された後、必ず通す関門

2つ目は、AIが書き終えたあとに必ず通す3項目のチェックリストです。

私が使っているのは、この3項目だけです。

1. 数字は本文で言っている値と、引用元・自分の実測値と一致しているか 2. 氏名・固有名詞の表記は正しいか 3. 引用リンクは実在するURLか(AIが作った架空のURLではないか)

これは、以前このブログで書いたAIに任せて事故りかけた話で扱った失敗から生まれた項目です。

正直に書きます。私はAIに書かせた記事7本で、自分の建設実務の年数を「20年」「22年」で混在させたまま公開してしまったことがあります。3本では自分の名前の漢字も間違えていました(雅治/正治/増本 正浩)。

これは「AIが悪い」のではなく、チェックを型にしていなかった私の運用不備でした。この3項目を最後に必ず人が通すようにしてから、同じ種類の事故はゼロです。

3項目のチェックリストに赤ペンで印を付けているマクロ接写

2026年の生成AI導入ガイドでも、「チェックリストを事前に決めて、AIに自分で採点させ、最後は人が突き合わせる」という2段構えが推奨されています(AIの回答品質チェック10項目 — ゼットリンカー)。

ここで大事な線引きが1つあります。AIに「自分の出力を採点して」と頼むことはできますが、それは人による確認の代わりにはなりません。同じAIが書いた文章を同じAIが採点しても、同じ思い込みが素通しになるだけです。

数字・氏名・引用リンクの3つだけは、最後に人が目で突き合わせる。この線は動かさない方が無難です。

2026年3月31日に更新されたAI事業者ガイドライン 第1.2版でも、AIエージェントの業務利用では「重大な影響が生じ得る場面で、人間が判断を介在させる仕組み」を社内ルールに反映することが明記されました(AI事業者ガイドライン第1.2版について — 経済産業省)。中小企業でも、この線引きから逃げない方が長い目で楽になります。

4. 型3: 引き継ぎメモ —— 昨日から今日へ渡す1枚

3つ目は、AIのセッションは切れるという前提で運用するための1枚メモです。

現在のAIは、会話のウィンドウ(コンテキストと呼びます)に上限があり、そこから外に出た情報は参照できません。昨日話したことは、今日別のセッションを立ち上げると、ほぼ完全に忘れられています(AIはなぜ前の話を忘れるのか — note)。

この対策として、AI業界では「ハンドオフメモ」や「HANDOFF.md」という呼び方で、次のセッションに渡す1枚メモを作る運用が定着してきました(Claude Codeのカスタムスラッシュコマンドでセッション引き継ぎノートを生成する — ヌーラボ、HANDOFF STATEの意味や活用法 — ユニバーサルマーケティング)。

これは中小企業の言葉に置き換えると、社内の引継ぎノートとまったく同じです。担当者Aから担当者Bに仕事を渡すときに、その日の状況を1枚にまとめる、あれです。

1枚の引き継ぎメモを2人で覗き込みながら、次の担当に渡す内容を確認している場面

私が毎晩AIに渡している引き継ぎメモには、この4項目だけを書いています。

  • 昨日書いたこと: タイトル・扱った話題・使ったソース
  • 今日渡すこと: 次の候補と、なぜそれを選んだか
  • 空いた枠: もし前日が落ちていたら、どの日が抜けているか
  • 直近の失敗: 直前で気づいた事故と、次に同じ轍を踏まないための対策

「昨日書いたこと」の欄が一番効きました。これを書き始める前、翌日のAIは前日と似た切り口の記事を書こうとしていました。切り口の重複を人が毎回検知するのは骨が折れます。1行渡すだけで、AIは自分で違う角度を探しに行きます。

もう1つ失敗を書いておきます。引き継ぎメモを作る前、私は代わりに「設計書のなかに★マークを付けて、次に書く記事の目印にする」という運用をしていました。書いた記事の★マークを外し忘れると、AIは同じ記事を延々と書こうとします。実際に8晩、ブログの自動化が止まったまま気づけませんでした。

この失敗のあと、目印運用をやめて、「引き継ぎメモにその日の状況を書き出す」型に切り替えました。人にとっても、AIにとっても、状況を書いて渡す方が、目印を維持するより持続します。

5. なぜ3つに絞るのか

型を作り始めると、増やしたくなります。

「これも入れておこう」「あれも書いておいた方が安全だ」——気がつくと、10個・20個の型ができています。ですが、型は増やすほど守られなくなります。これは自分でやってみて、痛いほど確かめました。

私が3つに残った理由は、この3つが動詞と1対1に対応しているからです。

  • 土台 → 毎回「入れる」もの
  • チェック → 生成後に必ず「通す」もの
  • 引き継ぎ → 明日に「渡す」もの

「入れる・通す・渡す」の3動詞が回っていれば、AI活用は日々少しずつ会社に積み上がります。増やすなら、この3つのどれかの中身を厚くするのが先です。新しい型を4つ目・5つ目と作るのは、あとからでも間に合います。

大企業のガイドラインをそのまま真似ないことも大事です。自社で回る最小構成から始める方が、結果的に長く続きます。

6. 明日から始めるならこの順番

もし、ここまで読んで「うちでもやってみようかな」と思われた方がいたら、この順番をお勧めします。

  • 今日: 土台をA4半分に書く。役割・読者・NG・出力の形の4項目だけ
  • 今週中: チェック項目を3つに絞る。数字・氏名・引用リンク、から始めるのが安全
  • 明日から: 引き継ぎメモを1日1行から書き始める。書式は後で整えれば良い

3つ揃えるのに1週間もかかりません。分厚いマニュアルや高価なツールから入るより、この3枚を回す方が、社内で「AIが実際に効いている」という感触が先に出てきます。

7. まとめ

毎日AIに使う型は、土台・チェック・引き継ぎの3つで足ります。凝ったプロンプトを毎回考えるより、この3枚を回す方が、AI活用は会社に積み上がります。

  • 土台は毎回一緒に渡す「うちのルール」。A4半分に収める
  • チェックは生成後に必ず通す3項目。数字・氏名・引用リンクは人が最後に突き合わせる
  • 引き継ぎメモは昨日から今日への1枚。「昨日書いたこと」の欄が一番効く
  • 増やしたくなっても3つに戻す。型は増やすほど守られない

御縁では、「うちも次の一手を打ちたい」というご相談をいただいたときに、まずこの3枚から一緒に書き起こすところをお手伝いしています。前回の記事「『ChatGPTは使っている』の次にやると効くこと」で書いた1枚と合わせて、明日の朝からでも回し始められる規模から入っていただいて大丈夫です。

Masaharu Ishimoto

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Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)

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AIに任せてよかった仕事・任せられなかった仕事 —— 自社で試して分かった6つの線引き

机の上に、AIに任せてよかった3枚のカードと任せられなかった3枚のカードが左右に並んだ俯瞰

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私はこのブログを、毎晩AIに書かせています。

今晩で開始から43日目、公開済みが32本。企画・執筆・画像生成・予約投稿・SNS投稿文まで、朝9時公開の直前まで自動で流れる仕組みで運用しています。

そのなかで、「AIに任せて成果物が出た仕事」と「任せると必ず事故る仕事」は、はっきり分かれてきました。

今日はその線引きを、実際にやってみて分かった6つとして書きます。判断基準の一般論ではなく、自分の会社で試して当たり外れが出た仕分けです。経営者としてAIを社内に入れる順序を決めるときの、叩き台になれば。

机の上に、AIに任せてよかった3枚のカードと任せられなかった3枚のカードが左右に並んだ俯瞰

1. なぜ「6つ」で整理したか

一般論としては、AIに向く仕事と向かない仕事を仕分けるための問いはいくつか提案されています。たとえば「やり直しがきくか/正解に幅があるか/材料が手元にあるか/良し悪しを判断できるか」の4つで判定する整理が、実務向けにはよく紹介されています(AI業務効率化はどの業務から?渡せる仕事と渡せない仕事の見分け方 — Tradivance)。

考え方としては正しいのですが、自分でやってみると「4つの問いに当てはめれば決まる」というほど単純ではない、というのが実感でした。同じ業務の中でも、任せてよい部分と任せられない部分が線1本で分かれます。

だから私は、業務そのものではなく「AIに何を渡していたか」で6つに切り直しました。前半3つは任せて成果物が出た渡し方、後半3つは任せて事故った渡し方です。

AIに任せて長く伸びる3本と、途中で途切れる3本を並べた抽象俯瞰

2. 任せてよかった3つ

2-1. 下書きの整え(構成・章立て・見出し順)

いちばん最初に効いたのが、記事の下書きの整えでした。

たとえば「変更協議資料を書くときの中身」というテーマで書くとき、私は話したい要素を箇条書きで先に出します。「変更事由の3区分/変更内容の対比/概算の内訳/通っても通らない落とし穴」といった具合です。この5〜10個の要素を渡して、「これを読み手が迷わない順で並べ直して」と頼むと、見出しの並びと章の切れ目がすぐ返ってきます。

これは事故りませんでした。理由は、元の材料(何を書きたいか)が私の側にあって、AIは並び順を整えているだけだからです。順序が微妙なときは私が入れ替えますが、たたき台があるのと白紙から並べるのでは、かかる時間がまるで違います。

具体的にどれくらい違うかと言うと、以前は1本の記事の構成を組むのに30分〜1時間かかっていたのが、いまは10分程度で収まっています。構成を組む工程を短くできると、材料集めと本文の言い回しに時間を残せる。これが大きい。

2-2. 調査結果の要約

Web検索で拾った3〜5本の記事を貼り付けて、「この中から、住宅会社の広報が気にする数字だけ抜き出して」と頼むのも、事故りませんでした。

これも、元になる正解が別の場所にある仕事です。AIは記事の中に書かれている数字を拾い出しているだけで、数字そのものを生み出してはいません。だから間違いにくい。

ただし、要約から抜き出した数字をそのまま本文に貼るのは危ない、というのが実測での注意点です。要約は「元の記事に書かれていた」ことを保証するだけで、「元の記事が正しかった」ことは保証しません。だから私は、要約でざっくり当たりを付けてから、原典に戻って数字を拾い直す、という2段構えでやっています。

原典に戻る手間が入りますが、「まず一次情報を全部読む」のと「要約を先に読んでから当たりを付ける」のでは、読む本数が半分になります。これも時間の削り方として効きます。

2-3. 別の言い方への置き換え

3つ目は言い換えです。

同じ内容を、「経営者向けに」「現場所長向けに」「もっと短く」「もっと丁寧に」と、宛先や長さを変えて書き直させる仕事は、事故りません。元の意味が正解として存在していて、AIは表現だけ変えているからです。

私は1本の記事のリード文を、毎回3〜4パターン書き直させます。そこから自分が読者として引っかかったものを選ぶ、という使い方をしています。選ぶ材料が3つあるのと1つしかないのでは、選んだ後の納得感が違います。

「別の言い方に置き換える」は、社内文書やお客様への返信の下書きにも同じ形で使えます。1回目の下書きを人が書いて、それを「もう少し柔らかく」「もう少し具体的に」と書き直させる。これも、任せて事故らない渡し方です。

3. 任せられなかった3つ

ここから後半です。業界解説の記事では「AIが得意」とされていることでも、自分でやってみると事故る渡し方がありました。3つ書きます。

3-1. 数字の最終値

これは前回の記事(AIに任せて事故りかけた話 — 数字と固有名詞は人が確認する)でもそのまま書きましたが、数字の最終値だけは、最後に人が見ないと事故ります。

自分の経歴の年数(20年と22年の混在)、氏名の表記ゆれ(雅治・正治・増本)、実測データの集計値、料金の考え方に出てくる金額の桁——このあたりは、AIに書かせるとどこかで必ずずれます。

なぜ数字だけがこう抜けるのか。私が2件の事故を並べて考えた結論は、「もっともらしく書ける場所」だけが、もっともらしい候補にすり替わる、というものでした。文法チェックには引っかからず、AI自身も「これは矛盾している」と気づく手がかりを持ちません。

だから対策は難しくありません。「この記事の数字と固有名詞だけ、拾い読みで照合する時間」を、書き終わったあとで別に取ります。3分もかかりませんが、これを省いた8本で21箇所の年数混在と3件の氏名誤字が起きました。数字の最終値をAIに任せていい仕事は、いまのところ1つも見つかっていません。

任せる範囲を決める前の乱雑な机と、線引き後の整った机の左右対比

3-2. 判断そのもの

2つ目は、**「複数の選択肢のうちどれか一つを選ぶ」判断——これはAIに任せられませんでした。

たとえば、記事の書き終わりで「これは公開してよいか、下書きに戻すか」を決める場面。AI側にも「この記事は公開可」と言わせることは技術的にできますが、そう答えたときの責任がAI側に何もない。あとで内容に問題が見つかっても、AIは謝りません。損失は全部会社側に残ります。

同じ理由で、私が任せない判断はこのあたりです。

  • 記事を予約公開するか、下書きに戻すか
  • お受けする相談か、お断りする相談か
  • 関連記事に何を選ぶか(読者の動線設計)
  • 料金の考え方をどこまで明かすか

これらは、正解が1つに決まらず、選び方に会社の方針が乗っている仕事です。方針を選ぶのは経営側の役割で、AIに委ねると、選ばれた結果が偶然会社の方針と合致しているかどうかを、後から人が検証することになります。それなら、最初から人が選んだほうが早い。

経済産業省が2026年3月に公表した「AI事業者ガイドライン 第1.2版」でも、AIの出力を評価の参考にする場合は人間による合理的な判断のもとで説明責任を果たすことが求められています(AI事業者ガイドライン 第1.2版 — 総務省・経済産業省)。判断そのものを人が握るというのは、リスク管理ではなく、AIの使い方の設計そのものとして求められている、と私は読みました。

3-3. 相手固有の文脈

3つ目は相手固有の文脈です。これがいちばん、最初は分かりにくかった。

たとえば「初回相談で聞き出したその会社の状況」を踏まえて次の提案を書く、という仕事。AIには手元にその会社の状況がありません。「こういう会社です」と説明しても、説明した範囲を超えた背景——決算の締まり方、社内の力学、過去の失敗、代表の口癖——には手が届きません。

私はこれを最初、「もっと詳しく説明すれば済む」と思っていました。ところが、詳しく説明しようとすると、説明すること自体に時間がかかりすぎて、自分で書いたほうが早い。ここで、「AIに文脈を渡す時間」と「自分で書き上げる時間」を天秤にかけて、後者が短いなら任せない、というシンプルな線引きに落ち着きました。

具体的には、次のような仕事は任せませんでした。

  • 特定のクライアント向けの提案の骨子(会社ごとの事情に踏み込む)
  • 相談の一次ヒアリングの解釈(相手の言い回しの裏を読む)
  • 業界特有の言い回しの選び方(現場側の人にしか通じない微妙なニュアンス)

一方、「相手固有の文脈が要らない部分」——たとえば見積書の体裁や、お客様への定型的な返信の下書き——は、任せて事故りません。相手が違っても書式が同じ仕事は、AIに向いています。

紙のメモを見ながらAIに指示文を書き込んでいる場面

4. 6つを表にすると

言葉で書いた6つを、いちど並べて見比べます。

| 渡し方 | 任せた結果 | 判定の理由 | |---|---|---| | 下書きの整え | 事故らない | 元の材料が人の側にある | | 調査の要約 | 事故らない | 元の正解が原典側にある | | 言い換え | 事故らない | 元の意味が正解として決まっている | | 数字の最終値 | 必ず事故る | 「もっともらしい候補」にすり替わる | | 判断そのもの | 必ず事故る | 選んだ結果の責任がAI側に無い | | 相手固有の文脈 | 事故るか、任せる時間より書く時間のほうが短い | AIの手元に相手の背景が無い |

前半3つの共通点は、「元になる正解が別のどこかにある」。後半3つの共通点は、「元になる正解が、AIの中にも人が渡した情報の中にも無い」。

これがいまの私の、6つの線引きです。

5. この線引きを、業界の一般整理と重ねてみる

参考までに、業界解説として整理されている12の事務作業の判定を横に置きます。中小企業の事務作業を「丸ごと任せる/たたき台まで任せる/ソフト機能に任せる/人が判断する」の4分類で仕分けた例です(AIで業務効率化、結局どの作業が消えるのか — 中小企業×AI活用)。

中小企業の事務作業のうち、AIに丸ごと任せる/たたき台まで任せる/ソフト機能に任せる/人が判断する、の4分類の内訳(一般的な整理)

分類の割合を見ると、「丸ごと任せる」は12業務のうち3つにとどまり、残り9つは何らかの形で人が関わる設計になっています。「人が判断する」領域は必ず残るというのは、事務作業全体に共通する構造のようです。

私の6つの線引きを、この4分類の考え方に重ねてみると、こう読めます。

  • 前半3つ(下書き・要約・言い換え)=「たたき台まで任せる」の範囲
  • 後半3つ(数字・判断・相手固有)=「人が判断する」の範囲

つまり、私の実測で分かった線引きは、業界解説と大枠では一致していたということです。ただし、業界の記事を先に読んで「そうか、これは任せていい・これはダメ」と信じるより、小さな仕事で試して当たり外れを一度自分で見たほうが、社内で説明するときに強い。これも経験値としての実感です。

6. 経営者の側から見たときの、渡す順序

読んでくださっているのは、社内でAIを入れるか、あるいはすでに入れて次にどう回すかを判断する立場の方だと思います。

この6つの線引きを、経営判断に落とすと、渡す順序はこうなります。

1. まず、「元になる正解が別のどこかにある」仕事から渡す。下書き・要約・言い換えの3つは、事故が出にくく効果も見えやすい入口です 2. 次に、その仕事の「数字と固有名詞と判断」だけを人が見る時間を、別に設ける。この3分〜5分の時間を省くと、必ずどこかで事故が出ます 3. 相手固有の文脈が要る仕事は、渡す前に「渡す時間と自分で書く時間」を天秤にかける。短い方を選ぶだけで、大きな失敗は避けられます

これは、AIを使わないうちからでも設計できます。むしろ、社内でAIを入れる前に、この順序を先に決めておいたほうが定着します。

前回の記事(AIを業務に入れるとき、最初に渡すべき仕事の選び方)で書いた「最初に渡す仕事の選び方」の、具体的な内訳がこの6つになると思ってください。

7. まだ試せていない領域

正直に書くと、この6つはまだ私の会社の実測での話です。業種によっては別の線引きがあるはずで、たとえば次の領域はまだ試せていません。

  • 金額の見積もり作成——見積書の体裁は任せられそうだが、単価表と過去実績をどう渡すかで結果が変わる
  • 社内のマニュアル作成——書き出し済みの手順があれば要約は任せられそうだが、暗黙知の言語化は不明
  • 顧客との交渉のたたき台——相手固有の文脈が強く出るため、渡し方が難しそう

これらは、依頼を受けて実際に触ったときに、経過報告シリーズ(毎日1本・AI執筆でSEOは上がるのか 第2回)のなかで書き足していきます。「試したことしか書かない」というルールは、A線の記事で自分に課しているものなので、ここは焦らずやります。

---

AIに何を任せるかは、業務ではなく渡し方で決まります。 「この仕事はAI向き」ではなく、「この仕事の、この部分の、この形の渡し方は事故らない」と、細かく切って渡す。それが1ヶ月半やってみた実感です。

社内でAIを入れる方の、順序を決める材料になれば十分です。

Masaharu Ishimoto

この記事を書いた人

Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)

AIエキスパート / 現場実務22年

22年間ずっと現場側で実務をしてきた人間が、いまはAIエージェントを毎日の業務に組み込んで運用しています。うまくいったことも、任せて失敗したことも、そのまま書いています。

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「ChatGPTは使っている」の次にやると効くこと —— 社内の型をAIに毎回渡す仕組み

ノートパソコンで社内ルールのドキュメントを一緒に見ながら、AIへの渡し方を確認している場面

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「うちもChatGPTは使っている」——ここ1年、経営者の方と話していて、この一言をいちばん多く聞くようになりました。

数年前なら「AIって、うちに関係あるの?」でしたから、変化は大きいです。ただ、その次に必ず出てくるのが、「使っているんだけど、正直、思ったほど楽になっていない」という言葉です。

私はこのブログをAIに書かせて毎晩1本、翌朝9時に公開する仕組みで運用しています。その仕組みを作る過程で、「使っている」と「効いている」の間には明確な段差があるということを、自分の会社でも痛いほど確かめました。

今日はその段差の話と、そこを越えるために何をやると効いたのか、逆に何をやって失敗したのかを、そのまま書きます。

ノートパソコンで社内ルールのドキュメントを一緒に見ながら、AIへの渡し方を確認している場面

1. なぜ「使っている」で止まる会社が多いのか

まず現在地の数字から確認します。

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査によると、中小企業でAIを導入している割合は20.4%(全社的3.6%+一部業務16.8%)、検討中が18.6%です(中小企業のAI活用実態調査 — 中小機構)。

中小企業のAI導入率は20.4%(中小機構2026年3月公表)。ただし導入と定着は別で、2026年は定着が問われるフェーズに入った

数字の伸び方を見ると、「導入」までは進んできた会社が確実に増えています。ただ、問題はその次に起きています。

2026年に入ってから、業界のガイドや調査記事では「導入」と「定着」は別物という指摘が目立つようになりました。導入は「ChatGPTを契約して社員が使える状態にする」こと。定着は「社員が毎日の業務のなかで自然にAIを使い、それが当たり前になっている」ことを指します(生成AIを定着させる方法とは — JAPAN AI、中小企業の生成AI定着完全ガイド — BoostX)。

「ChatGPTを試したけど、結局誰も使わなくなった」——2025年以降、中小企業でこの声が急増しているとも報告されています(生成AIを使いこなす中小企業と使えない会社の差 — Anomaly)。

導入は済んだ。でも定着はしていない。ここが、今の中小企業の共通の踊り場です。

2. 「使っている」と「効いている」を分けているもの

私が自分の会社でAIを毎日動かしていて、いちばん強く感じているのはこの点です。

AIが効いてこない一番の理由は、毎回ゼロから頼んでいるから、です。

聞こえは当たり前ですが、実際の現場を見るとほぼこうなっています。担当者が思いついたときにChatGPTを開き、その場で「これ書いて」「これ要約して」と一発の依頼を投げる。出てきたものを手直しして使う。その依頼の内容は誰の手元にも残らない——だから次の週、同じ内容を頼むときは、また別の担当者がゼロから書き直す。

会社が毎回スタート地点に戻ってしまう構造です。これが続くと、AIを何回使っても社内に何も積み上がらない。使っている人は「ちょっと便利」で終わり、使っていない人は「面倒そう」で終わる。両方から「効いていない」と言われる、というのが定着していない会社の典型です。

3. 効いてきたのは「社内の型を、毎回AIに渡す」に切り替えたとき

私の会社で切り替えたのは、この一点でした。

その都度AIに指示するのではなく、うちの型(ルール・書式・NG集・言い回しの好み)を1つのドキュメントに書き溜めて、AIに仕事を頼むときは必ずそれを一緒に渡す。

机の上に社内ルールを書き出した付箋を色分けして並べた俯瞰イメージ

具体的にドキュメントに書いているのは、たとえばこういうものです。

  • あいさつ文の型、見出しの順番、段落の長さの好み
  • 使ってよい表現・使ってはいけない表現(建設業向けだと「派遣」「常駐」は書かない、といった業務判断も)
  • 数字を書くときの出典の付け方
  • 相手ごとの敬語のトーン
  • 断り方の言い回し
  • よくある質問と、それに対するうちの答え方

このドキュメントは、月に何度も書き足しています。「あ、ここはこう書きたかった」と気づいたら、その場で追記する。AIの出力を直したら、その直した理由もドキュメントに反映する。すると、次からAIは同じ間違いをしなくなります。

これは新しい発想ではなく、業界の解説記事でも「社内で過去に使ったドキュメントやレポートを例として与えると、組織固有の言語トーンや形式を反映した出力が得られる」という書き方で紹介されている定石です(ChatGPTプロンプトテンプレート完全ガイド — AI総合研究所)。

ただ、「聞いたことはある」と「毎日回している」の間には、また段差があります。私の会社でも、この仕組みを回してみるまでは「なんとなく良さそう」で終わっていました。

4. 失敗した話 —— ルールが陳腐化して、仕組みが8晩止まった

いいことばかり書いても信用ならないので、この方式で私が実際にやらかした失敗も書きます。

このブログを回している仕組みには、「次に書く記事はこれ」という目印をルールのドキュメントに書き込んでおく仕掛けが、当初ありました。目印を頼りにAIが毎晩「次に書く記事」を選び、書き上げて予約投稿する、という流れです。

うまくいっていたのは最初だけでした。目印は、記事を書き上げたら次の記事に付け替える必要があります。ところが、あるとき目印を付け替え忘れたまま数日放置してしまったのです。

すると、AIは毎晩ちゃんと動きにきて、目印の指す記事を見て「これはもう公開済みだから書く必要がない」と判断して、静かに終わっていました。ログには「該当なし」とだけ書いてあり、私が翌朝それを見るまで、8晩連続で1本も記事が書かれていなかったことに気づけなかったのです。

翌朝、仕組みが動いていなかったことに気づく画面のマクロ接写

これはAIが賢くないから起きたことではありません。むしろAIはルールに正確に従っていました。ルールの側が現実からずれていたのに、それを検知する仕組みが入っていなかった、というのが本当の原因です。

2026年7月27日にこの目印方式は廃止し、「予定日がいちばん近い記事から順に書く」という放っておいても陳腐化しない基準に置き換えました。以降、同じ理由で止まっていません。

学びはひとつです。AIに社内の型を持たせる仕組みは、ルールを書いたら終わりではない。ルールが古くなっていないか、ルールが現実とずれていないかを、定期的に人が見に行く運転席が必ずセットで要ります。

5. どこから始めるか(3つの手順)

「うちもやってみたい」と思ったときに、いきなり分厚いドキュメントを書こうとすると挫折します。私が実際に効いたのは、次の順番でした。

AIに渡すルール文書を、手元のメモを見ながら書き足している場面

手順1: 直近3ヶ月で「同じ質問をAIに何度もした業務」を1つだけ選ぶ

新規で仕組みを作るのではなく、すでにAIに何度も頼んでいる業務を選ぶ。ここに「毎回ゼロから頼み直している」ムダが必ず溜まっています。営業メールの返信、議事録の要約、問い合わせフォームへの一次回答——このあたりが最初の候補になりやすいです。

手順2: その業務の「うちの型」を、A4半分に書き出す

長く書かなくていいです。A4半分に収まる量で、次の3つだけ書きます。

  • この業務で守ってほしい形式(並び順・見出し・長さ)
  • この業務で使ってはいけない表現(社名の誤字防止・業界用語の使い分け)
  • 判断に迷ったときに人に戻すサイン(金額・固有名詞・法律に関わる話は必ず人に確認)

これが「社内の型」の最小単位です。分厚く作ろうとすると更新が止まるので、最初は必ず薄く始めます。

手順3: AIに仕事を頼むたびに、必ずこのA4を一緒に渡す

ここが定石を外しやすいところです。ChatGPTでも、Claudeでも、Geminiでも、新しい会話を始めたら毎回、この型を最初に読ませてから業務の指示を出す。「一度覚えたはず」と思って省略した瞬間から、AIはまた素の状態に戻ります。

Skills機能(保存したプロンプトを呼び出す機能)が使えるプランなら、その型をSkills化して、業務ごとに呼び出すのが実務的です(ChatGPTプロンプトテンプレート完全ガイド — AI総合研究所)。使えないプランでも、そのA4をコピペするだけで十分に効きます。手間はほんの数秒です。

この3手順の目的は「立派な仕組みを作ること」ではなく、「毎回ゼロから頼む」の状態から会社を1歩ずらすことです。1歩ずれるだけで、社内に何かが積み上がり始めます。

6. AIに「判断」まで任せない一線を、最初に決めておく

もう1つだけ、これから仕組みを作る方に伝えておきたいことがあります。

社内の型をAIに渡すと、AIの出力はどんどん自社らしくなります。すると、AIが最終判断まで下してしまう場面が出てきます。金額の提示、契約条件の返答、外部への公式コメント——このあたりでAIが「うちの型どおり」に返してしまうと、その返信を止められる人が誰もいなくなります。

2026年3月31日に更新されたAI事業者ガイドライン 第1.2版では、AIエージェントのような自律的に動く仕組みを業務に入れる際に、「重大な影響が生じ得る場面で、人間が判断を介在させる仕組みを社内ルールに反映すること」が明記されました(AI事業者ガイドライン第1.2版について — 経済産業省)。

これは大企業だけの話ではありません。「うちの型」を書くときに、そこに1行だけでも「ここから先はAIに任せず必ず人が返す」という線を入れておく——それだけで、後から仕組みが暴走する確率がぐっと下がります。

前回の記事「AIに任せて事故りかけた話」で書いた、自分の名前を3回も誤字で公開してしまった件も、遡ればここに該当します。数字と固有名詞は、AIがどれだけ「うちの型」を覚えたとしても、最後は人が確認する——この線は動かさない方が無難です。

7. まとめ

「ChatGPTは使っている」の次にやると効くのは、社内の型を1枚のドキュメントに書き、AIに仕事を頼むたびに必ず一緒に渡すことです。

  • 「導入」と「定着」の間の踊り場に、多くの中小企業が今います
  • 効いてこない一番の理由は、毎回ゼロから頼んでいる構造にあります
  • うちの型をA4半分に書き、毎回AIに渡すだけで、社内に少しずつ積み上がる状態に変わります
  • ただし、ルールが陳腐化しても検知できる仕組みをセットで作ること(私は8晩気づけずに落としました)
  • 数字・固有名詞・金額など、人が最後に見る線は最初に決めておくこと

御縁では、「うちも次の一手を打ちたい」というご相談をいただいたときに、まずこのA4半分から一緒に書き起こすところをお手伝いしています。分厚い研修や高価なツールから入る前に、この1枚だけでも試してみると、感触が変わるはずです。

Masaharu Ishimoto

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Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)

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AIを業務に入れるとき、最初に渡すべき仕事の選び方

夜のオフィスで一席だけ明かりが灯り、その上空に光の層が広がっている俯瞰イメージ

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「うちもAIを使いたいんですが、何から始めればいいですか」。

ここ数ヶ月、いちばん多く聞かれる質問です。建設会社の経営者からも、住宅会社の経営者からも、ほぼ同じ言い方で聞かれます。

私の答えはいつも同じで、最初に渡すのは「やり直しが効く仕事」から、です。

この記事では、なぜそう答えるのかを、自分の会社で実際にやったこと——うまくいったことも、先日2日間まるごと止まった失敗も含めて——整理します。

夜のオフィスで一席だけ明かりが灯り、その上空に光の層が広がっている俯瞰イメージ

1. 多くの会社は「何から」で止まっている

まず、いまどのくらいの会社がAIを使っているのかを見ておきます。

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した実態調査(全国の中小企業10,000社に配布・有効回答1,668社)によると、AIを導入している中小企業は20.4%、導入を予定・検討中が18.6%、そして「導入予定なし」が61.0%でした(中小企業のAI等の利活用に係る実態調査)。

中小企業のAI導入状況(導入済み20.4%・導入予定/検討中18.6%・導入予定なし61.0%)

同じ調査で、私がいちばん引っかかったのは別の数字です。

「成功事例や活用事例などの情報が不足している」と答えた企業が83.3%。「適切なベンダーや製品を選定する情報の不足」が79.8%で続きます。

つまり、多くの会社は「AIが要るかどうか」で迷っているのではなく、「で、うちは何から手をつけるのか」が分からなくて止まっているということです。

私が「何から始めればいいですか」と聞かれ続けているのは、たまたまではなかったわけです。

2. 私が最初にAIに渡した仕事

先に、私自身が何をやっているかを書きます。

私は22歳から一般土木の施工管理、26歳からは専門業種の技術職として、通算22年ずっと現場側にいました。いまはその経験を土台に、AIを使って現場事務所のバックオフィスを効率化する仕事をしています。

そのうえで、自分の会社で最初にAIに渡したのは「このブログを書いて予約投稿するまで」の仕事でした。

具体的には、毎晩決まった時刻にAIが動いて、次に書く記事をリストから選び、必要な調べものをして、本文を書き、画像を作り、翌朝9時公開の予約投稿として登録するところまでを一続きでやります。SNSの投稿文もそこで作っておいて、翌朝別の仕組みが投稿します。

ここでいう「AIエージェント」というのは、チャットで一問一答するのではなく、手順を渡すと自分で調べて実行するところまで進むAIのことです。難しく考えなくて大丈夫で、要は「指示書を読んで作業する担当者」に近い使い方です。

なぜこの仕事を最初に選んだのか。理由は次の章のとおりです。

3. 最初に渡す仕事を選ぶ4つの条件

私が仕事を選ぶときに見ているのは、この4つです。

3-1. やり直しが効くこと

いちばん大事なのがこれです。間違っていたら捨ててやり直せる仕事かどうか。

ブログ記事は、公開前なら何度でも書き直せます。おかしければ消せばいい。取り返しがつきます。

逆に、一度出したら戻せない仕事——提出済みの書類、送信済みの見積、押した判子——は最初に渡す仕事ではありません。AIが優秀かどうか以前に、学習期間中に必ず起きる失敗を吸収できないからです。

やり直しが効く仕事と、一度きりでやり直せない仕事の対比イメージ

3-2. 出来の良し悪しを、自分が判定できること

次に、上がってきたものを見て「これは違う」と自分が言えるか。

私はブログの文章については、良い・悪いの判断が自分でつきます。だから任せられます。

判断できない分野の仕事を最初に渡すと、間違ったまま進んでいることに気づけません。これは効率化ではなく、単にリスクを増やしているだけです。

3-3. 毎回発生する仕事であること

年に1回の仕事をAIに渡しても、仕組みを作る手間のほうが大きくなります。

先ほどの調査でも、AIの導入目的は「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%と突出していて、2位の「品質向上」(32.3%)と50ポイント以上の差がついています。

AIの導入目的(業務効率化・作業時間の短縮が87.0%で突出)

時間を削るのが目的なら、削れる回数が多い仕事=頻度の高い仕事から入るのが素直です。

3-4. 止まっても、他人に迷惑がかからないこと

そして最後がこれです。最初の実験台は、必ず自分の会社の仕事にする。

お客様に納品する仕事や、期限のある提出物でいきなり試すと、うまくいかなかったときに謝るのは自分ではなく相手の時間です。

私がクライアントの業務ではなく自社のブログから始めたのは、この理由が大きいです。

4. 実際に、2日間まるごと止まりました

ここからが失敗の話です。

先ほど「毎晩AIが記事を書く」と書きましたが、この仕組みは2026年7月31日と8月1日の2日間、まったく動きませんでした。記事は1本も作られず、ブログは2日分の穴が空きました。

原因はAIの性能ではなく、AIを動かすための認証が深夜に期限切れになっていたという、ごく事務的なものでした。人が誰も触っていない時間帯に切れて、そのまま朝を迎えていたわけです。

ただ、本当に痛かったのは止まったことではなく、止まったのに誰も気づけなかったことでした。

仕組みとしては「失敗しても処理を続ける」という作りにしていたので、外から見るかぎりエラーはゼロ、正常終了と記録されていました。実際には中身が全滅していたのに、です。

気づいたのは2日経ってからでした。

私はこの経験から、AIに仕事を渡すときの条件をもう1つ足しました。「動かなかったときに、それが分かる形になっているか」です。

いまは、認証が切れていれば作業を始める前に止めて手元に通知が来ますし、朝の時点で記事が無ければ「無い」と知らせが来ます。AIに仕事を渡すというのは、正常系を作ることではなく、異常に気づける形を作ることだ——というのが、2日分の記事と引き換えに学んだことです。

明け方の窓際で、止まっていた仕組みに気づいた瞬間のイメージ

ついでに正直な数字も書いておきます。毎日書けているからといって読まれているわけではありません。この仕組みで公開した記事は、直近90日で1本あたり0〜2ページビュー、サイト全体でも30日で162ページビューという規模です。「毎日出せている」と「成果が出ている」は別物で、いまは前者を作っている段階です。

5. 逆に、最初に渡してはいけない仕事

条件の裏返しになりますが、はっきり言葉にしておきます。

1. 一度出したら取り消せないもの(提出済みの書類、送信済みの連絡、対外的な回答) 2. 金額と固有名詞が入るもの。AIは、それらしい数字と名前をそれらしく書きます。ここは人が確認する場所です 3. 判断そのもの。「どちらを選ぶか」を渡してはいけません。渡すのは、判断材料を揃えるところまでです

3つ目は、私の仕事の線引きそのものでもあります。AIに書類の下ごしらえをさせても、提出するかどうかを決めるのは、必ずその現場の責任者側です。ここを渡してしまうと、効率化ではなく責任の押し付けになります。

6. 明日からできる、最初の30分

最後に、実際にやってみるための手順を書きます。特別な道具は要りません。

机の上に業務を書き出した付箋を色分けして並べた俯瞰イメージ

1. 付箋を20枚用意して、先週やった仕事を1枚1件で書き出す(思い出せる範囲でかまいません) 2. 「やり直しが効くか」で2つの山に分ける 3. やり直しが効く山の中から、毎週やっている仕事を3枚選ぶ 4. その3枚のうち、自分が出来の良し悪しを判定できるものを1枚だけ残す 5. その1枚を、まず自分でAIに手伝わせてみる(いきなり自動化しない)

最初は自動化しないことが大事です。自分で何度か一緒にやってみて、「毎回だいたい同じ手順だな」と分かってから仕組みにする。順番を逆にすると、間違った手順が毎晩正確に繰り返されるだけになります。

私も、いまの毎晩動く仕組みにたどり着く前に、8晩続けて何も成果が出ない期間がありました。原因は設定の問題でしたが、手順が固まる前に自動化を急いだという面もあったと思っています。

---

「うちは何から始めればいいですか」の答えは、業種によって変わりません。

やり直しが効いて、良し悪しが自分で分かって、毎週発生して、止まっても人に迷惑がかからない仕事。それが1枚見つかれば、そこが入口です。

Masaharu Ishimoto

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