「プロンプトの書き方」を検索する経営者が、この1年で本当に増えました。
私は自社のブログをAIに書かせて毎晩1本、翌朝9時に自動で公開する運用を続けています。今日でちょうど43日目、公開本数は32本を超えたところです。
その中で、毎日必ず使い続けている"型"は、たった3つしか残っていません。凝ったプロンプトの書き方ではなく、この3つを最初に決めておくと、AI活用は少しずつ会社に積み上がります。
今日は、その3つの型それぞれの中身と、途中でうまくいかなかった話を、そのまま書きます。
目次

1. 「良いプロンプトを毎回考える」は続かない
まず、業界の潮目がすでに変わっています。
2026年に入ってから、AIの世界では「プロンプトエンジニアリング」から「コンテキストエンジニアリング」へ、という言い方をよく見るようになりました(コンテキストエンジニアリングとは? — Salesforceブログ、プロンプトエンジニアリングは終わった? — cloco)。
難しそうな言葉ですが、中身はシンプルです。1回のプロンプトを磨くより、AIが仕事するときに「何を知っている状態か」を設計する、というだけの話です(プロンプトエンジニアリングとの違い — Findy Team+)。
私はこれを難しく捉えず、「AIに毎回渡す3枚を決める」という形で運用に落としました。それが以下の3つです。
- 型1: 土台 —— 毎回一緒に渡す「うちのルール」
- 型2: チェック —— 生成された後、必ず通す関門
- 型3: 引き継ぎ —— 昨日から今日のAIへ渡す1枚メモ
順に見ていきます。
2. 型1: プロンプトの土台 —— 毎回一緒に渡す「うちのルール」
1つ目は、AIに何を頼むときも、指示文の前に必ず一緒に貼りつける短い文書です。私はこれを「土台」と呼んでいます。
土台に書くのは、次の4つだけで十分でした。
- 役割: AIがどんな立場で書くか(例: 建設実務の経験があるライター)
- 読者: 誰に向かって書くか(例: 中小企業の経営者。ITに明るいとは限らない)
- NG表現: 使ってはいけない言い回し(例: 「必ず〜になる」「絶対に〜」)
- 出力の形: 章立て・文字数・段落の長さの目安
2026年のプロンプトの解説記事でも、この「役割・読者・NG・形式」の4要素はほぼ共通して挙げられています(プロンプト設計7原則 — Uravation、プロンプトの書き方完全ガイド — OptiMax)。

土台の効き目は、書いた瞬間には出ません。効いてくるのは、同じ土台を10回・20回と貼り続けたあとです。AIが「うちの会社の人」として振る舞い始め、頼み方を短くしても意図がずれなくなります。
失敗した話も1つ書いておきます。運用を始めた最初の頃、私は土台を欲張って長く書きすぎました。禁止表現を20個、注意事項を15個並べたら、AIは長い注意書きの後半をだんだん無視するようになりました。
土台はA4半分に収まる長さにする、というのが今の私の目安です。長くしたくなったら、それは土台ではなく、次に説明する「チェック手順」に回します。
3. 型2: チェック手順 —— 生成された後、必ず通す関門
2つ目は、AIが書き終えたあとに必ず通す3項目のチェックリストです。
私が使っているのは、この3項目だけです。
1. 数字は本文で言っている値と、引用元・自分の実測値と一致しているか 2. 氏名・固有名詞の表記は正しいか 3. 引用リンクは実在するURLか(AIが作った架空のURLではないか)
これは、以前このブログで書いたAIに任せて事故りかけた話で扱った失敗から生まれた項目です。
正直に書きます。私はAIに書かせた記事7本で、自分の建設実務の年数を「20年」「22年」で混在させたまま公開してしまったことがあります。3本では自分の名前の漢字も間違えていました(雅治/正治/増本 正浩)。
これは「AIが悪い」のではなく、チェックを型にしていなかった私の運用不備でした。この3項目を最後に必ず人が通すようにしてから、同じ種類の事故はゼロです。

2026年の生成AI導入ガイドでも、「チェックリストを事前に決めて、AIに自分で採点させ、最後は人が突き合わせる」という2段構えが推奨されています(AIの回答品質チェック10項目 — ゼットリンカー)。
ここで大事な線引きが1つあります。AIに「自分の出力を採点して」と頼むことはできますが、それは人による確認の代わりにはなりません。同じAIが書いた文章を同じAIが採点しても、同じ思い込みが素通しになるだけです。
数字・氏名・引用リンクの3つだけは、最後に人が目で突き合わせる。この線は動かさない方が無難です。
2026年3月31日に更新されたAI事業者ガイドライン 第1.2版でも、AIエージェントの業務利用では「重大な影響が生じ得る場面で、人間が判断を介在させる仕組み」を社内ルールに反映することが明記されました(AI事業者ガイドライン第1.2版について — 経済産業省)。中小企業でも、この線引きから逃げない方が長い目で楽になります。
4. 型3: 引き継ぎメモ —— 昨日から今日へ渡す1枚
3つ目は、AIのセッションは切れるという前提で運用するための1枚メモです。
現在のAIは、会話のウィンドウ(コンテキストと呼びます)に上限があり、そこから外に出た情報は参照できません。昨日話したことは、今日別のセッションを立ち上げると、ほぼ完全に忘れられています(AIはなぜ前の話を忘れるのか — note)。
この対策として、AI業界では「ハンドオフメモ」や「HANDOFF.md」という呼び方で、次のセッションに渡す1枚メモを作る運用が定着してきました(Claude Codeのカスタムスラッシュコマンドでセッション引き継ぎノートを生成する — ヌーラボ、HANDOFF STATEの意味や活用法 — ユニバーサルマーケティング)。
これは中小企業の言葉に置き換えると、社内の引継ぎノートとまったく同じです。担当者Aから担当者Bに仕事を渡すときに、その日の状況を1枚にまとめる、あれです。

私が毎晩AIに渡している引き継ぎメモには、この4項目だけを書いています。
- 昨日書いたこと: タイトル・扱った話題・使ったソース
- 今日渡すこと: 次の候補と、なぜそれを選んだか
- 空いた枠: もし前日が落ちていたら、どの日が抜けているか
- 直近の失敗: 直前で気づいた事故と、次に同じ轍を踏まないための対策
「昨日書いたこと」の欄が一番効きました。これを書き始める前、翌日のAIは前日と似た切り口の記事を書こうとしていました。切り口の重複を人が毎回検知するのは骨が折れます。1行渡すだけで、AIは自分で違う角度を探しに行きます。
もう1つ失敗を書いておきます。引き継ぎメモを作る前、私は代わりに「設計書のなかに★マークを付けて、次に書く記事の目印にする」という運用をしていました。書いた記事の★マークを外し忘れると、AIは同じ記事を延々と書こうとします。実際に8晩、ブログの自動化が止まったまま気づけませんでした。
この失敗のあと、目印運用をやめて、「引き継ぎメモにその日の状況を書き出す」型に切り替えました。人にとっても、AIにとっても、状況を書いて渡す方が、目印を維持するより持続します。
5. なぜ3つに絞るのか
型を作り始めると、増やしたくなります。
「これも入れておこう」「あれも書いておいた方が安全だ」——気がつくと、10個・20個の型ができています。ですが、型は増やすほど守られなくなります。これは自分でやってみて、痛いほど確かめました。
私が3つに残った理由は、この3つが動詞と1対1に対応しているからです。
- 土台 → 毎回「入れる」もの
- チェック → 生成後に必ず「通す」もの
- 引き継ぎ → 明日に「渡す」もの
「入れる・通す・渡す」の3動詞が回っていれば、AI活用は日々少しずつ会社に積み上がります。増やすなら、この3つのどれかの中身を厚くするのが先です。新しい型を4つ目・5つ目と作るのは、あとからでも間に合います。
大企業のガイドラインをそのまま真似ないことも大事です。自社で回る最小構成から始める方が、結果的に長く続きます。
6. 明日から始めるならこの順番
もし、ここまで読んで「うちでもやってみようかな」と思われた方がいたら、この順番をお勧めします。
- 今日: 土台をA4半分に書く。役割・読者・NG・出力の形の4項目だけ
- 今週中: チェック項目を3つに絞る。数字・氏名・引用リンク、から始めるのが安全
- 明日から: 引き継ぎメモを1日1行から書き始める。書式は後で整えれば良い
3つ揃えるのに1週間もかかりません。分厚いマニュアルや高価なツールから入るより、この3枚を回す方が、社内で「AIが実際に効いている」という感触が先に出てきます。
7. まとめ
毎日AIに使う型は、土台・チェック・引き継ぎの3つで足ります。凝ったプロンプトを毎回考えるより、この3枚を回す方が、AI活用は会社に積み上がります。
- 土台は毎回一緒に渡す「うちのルール」。A4半分に収める
- チェックは生成後に必ず通す3項目。数字・氏名・引用リンクは人が最後に突き合わせる
- 引き継ぎメモは昨日から今日への1枚。「昨日書いたこと」の欄が一番効く
- 増やしたくなっても3つに戻す。型は増やすほど守られない
御縁では、「うちも次の一手を打ちたい」というご相談をいただいたときに、まずこの3枚から一緒に書き起こすところをお手伝いしています。前回の記事「『ChatGPTは使っている』の次にやると効くこと」で書いた1枚と合わせて、明日の朝からでも回し始められる規模から入っていただいて大丈夫です。
この記事を書いた人
Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)
AIエキスパート / 現場実務22年
22年間ずっと現場側で実務をしてきた人間が、いまはAIエージェントを毎日の業務に組み込んで運用しています。うまくいったことも、任せて失敗したことも、そのまま書いています。
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