AIエージェントに毎晩ブログを書かせる仕組みで、初期にやめた3つの設計判断

深夜の無人のオフィスで、ノートパソコンだけがブログ執筆と予約投稿のログを表示している場面

御縁 GROWTH ロゴ

このブログは、毎晩AIエージェントが1本記事を書き、翌朝9時に予約公開されます。私は朝それを読んで、マズければ9時前に取り消す、という運用を続けています。

始めたのは2026年の7月下旬。今日でちょうど60日を超えたところです。

60日のあいだに、私は「便利そうだから入れたけれど、続けるうちに全部やめた設計判断」が3つあります。

今日は、その3つがなぜ生まれて、どこで折れて、今どうしているかを、そのまま書きます。AIを業務に入れようとしている経営者の方に、同じ穴を踏んでほしくないからです。

深夜の無人のオフィスで、ノートパソコンだけがブログ執筆と予約投稿のログを表示している場面

1. なぜ「やめた設計判断」を書くのか

AIエージェントに業務を任せる話題は、2026年に入って一気に増えました。半年で暴走が疑われる報告が約5倍に増えたという調査もあります(AIエージェントの失敗事例4つ — AINOW)。

私自身も、自社のブログを実験台にして、この半年で運用の中でしか気づけない設計ミスを3つ踏みました。

大切なのは、最初の設計が悪かったこと自体ではありません。悪いのは、「あとで直せばいい」と思って動かし続けてしまうことです。

AIエージェント導入で失敗する企業の共通課題として、多くの解説記事が「導入設計と運用設計の不足」を挙げています(AIエージェント導入の失敗5パターン — Uravation、中小企業のAI導入で失敗する理由 — 中小企業AI導入ナビ)。私が踏んだ3つの穴も、その通りでした。

2. やめた① 次の1本を「★印」で指す運用(★ポインタ運用)

最初にやったのは、次に書くべき記事を「★」で指しておく、という運用でした。

どう動いていたか

企画一覧のファイルに、記事案がたくさん並んでいます。その中の1つに「★」を付けておくと、夜間の仕組みがそれを見つけて、その1本を書きます。書き終えたら次の企画に「★」を移す —— という設計です。

一見すると自然です。「次はこれ」を人間が矢印で指しておくだけなので、直感的でした。

何が折れたか

問題は、企画のファイルが4つに増えたときに起きました。建設・住宅・AI・サービスの4ライン運用に切り替えた瞬間、「★」が4個に増え、どのファイルの★を優先するかという別のルールが必要になりました。

  • 前日書き終えたのはどのラインか?
  • 曜日はどのライン?
  • 明日書き始める前に、どのファイルの★を進めるか?

このメタルールを毎晩AIに正しく判断させ続けるのは、思ったより難しい仕事でした。ある晩、AIは「どの★を進めるべきか」の判断を1文字ずれで解釈し、以降は誰も次を書かなくなりました。

結果、8晩連続で1本も上がりませんでした。朝、9時の枠が空のままメールが飛んでくるのを、8回見ました。

どう直したか

やめる判断は早めでした。7月下旬、「★を探すのをやめて、日付だけ見る」と決めました。今は次のようになっています。

  • 企画一覧の各行に「投稿予定日」だけを書いておく
  • 夜間の仕組みは「企画のうち、投稿予定日が最も早い行」を選ぶ、それだけ
  • ★は使わない

判断のロジックが1行のルールに減った瞬間、8晩空振り問題は消えました。

上=乱雑な★印の付いたメモ、下=予定日と記事名だけが並んだ静かな一覧、という2枚の紙の対比

これはAIエージェントの設計としては、SREの本番運用で使うガードレールパターンや、ハーネスエンジニアリングで言われている、「判断を減らして、状態を1つに束ねる」という発想と重なる話でした。

経営者の実務で言い換えると、AIに毎晩なにか判断させるルールは、社員の当番表と同じで、手数が多いほど回らなくなります。「手が空いた人がやる」という決め方の会社は、たいてい誰もやりません。

3. やめた② 1晩に何本もまとめて公開する設計(週2本→1日1本へ)

2つ目にやめたのは、1晩に複数本を公開できる設計でした。

どう動いていたか

最初、私は「週2本」というペースで設計しました。夜間の仕組みには「1晩に最大2本まで書いてよい」というオプションを付けていました。ネタが溜まったら一気に消化するつもりでした。

何が折れたか

1晩に2本上げようとした最初の日、1本目でリサーチ用のAPIが認証切れしていたのに気づかず、そのまま2本目も同じ失敗でこけました。翌朝9時、記事は2本とも上がっていませんでした。

もっと怖かったのはその次の日です。前日の分を取り戻そうと「1晩に3本」に一時的に上げた晩、1本の設定ミスが3本ぶんに拡散しました。3本とも、著者名の年数の記述に同じミスが入っていました。

暴走のダメージは、本数に比例するのではなく、掛け算で効きます(AIエージェント安全設計 — Zenn)。1本の間違いを1本で止めるのと、それが3本に伝播するのとでは、修復工数がまるで違いました。

どう直したか

やめた後は、次のシンプルな2つに戻しました。

  • 1日1本までを、コード側でハードキャップとして持たせる
  • そのキャップは環境変数で外せるが、自動処理からは外せないよう仕組み側で締めておく

今は、「たくさん書ける晩」でも1本しか書かない、という思想で固定しました。溜まったネタは、翌日以降の予定日に順番に並べます。

1日1枚の付箋しか貼らない週間カレンダーに、2枚目を貼ろうとした手を静かに押さえている場面

これは、生成AIのガードレール設計でよく言われる「破壊的操作の物理的な遮断」の発想に近い話です。プロンプトで「やりすぎないで」とお願いするのではなく、そもそも呼べない構造を作っておく。

経営者の実務で言い換えると、AIを社内に入れるときも同じです。「気をつけて使ってね」で運用するより、そもそも一度に多くを動かせない仕組みにしておくほうが、事故ったときの被害が小さく済みます。

4. やめた③ 「あとで実例を入れる」プレースホルダ運用

3つ目は、記事本文の中に【ここに実例】と書いた箱を置いておく、という運用でした。

どう動いていたか

AIには、記事の一次情報として「クライアントの事例をあとで代表が入れる」前提で本文を書かせていました。本文の中には【ここに実例】という文字列が仮に置かれ、翌朝、私が実際の事例をそこに埋める、という段取りです。

「AIは骨組み」「人は肉付け」の分業として、当時はこれが正解に見えました。

何が折れたか

始めて数日後、その【ここに実例】が、埋められないまま公開直前まで残っていたことがありました。私が朝バタバタしていて、埋めるのを忘れた日です。

幸い、9時前に気づいて公開を取り消しましたが、「あとで埋める」を前提にしたブロックは、埋め忘れが必ず起きる、と分かった瞬間でした。

これは私に限った話ではありません。フォーム設計の解説記事でも、プレースホルダーがラベルの代わりに使われた入力欄では、後で見返したときに何を入れる欄か分からず入力ミスや空欄が発生しやすい、という指摘が繰り返し出てきます。「あとで入れる」箱は、あとで入れられない、という構造は、業種を超えて同じでした。

どう直したか

決めたのは、「そもそも実例なしで完結する記事構成にする」という切り替えでした。

  • 【ここに実例】は本文から消す
  • 代わりに、業界統計・公式ガイドライン・自社の実測を根拠にする
  • クライアントの事例がその記事に本当に必要なときだけ、書く前に明示的に「今回は入れる」と宣言する

この判断で、AIが書いた原稿を、私がそのまま朝読んで、そのまま出すという一発通しの状態に近づきました。

「やめた3つの設計判断」と書かれた紙を挟んで、2人が向かい合って中身を確認している場面

経営者の実務で言い換えると、社員に「あとで直しといて」と依頼した仕事は、たいてい直されません。「あとで」を仕組みから抜くと、AIも人も、ちゃんと動きます。

5. 3つに共通していた「1つの発想」

3つの設計判断は、それぞれ別のところで折れました。しかし、やめた後に振り返ると、共通していた失敗の型は1つだけでした。

「後から直せる」を前提にした設計は、後から直せない。

  • ★ポインタは「次の朝に★を進めればいい」と思っていた → 進めなかった
  • 1晩複数本は「暴走したら止めればいい」と思っていた → 止まらなかった
  • プレースホルダは「朝に埋めればいい」と思っていた → 埋まらなかった

3件とも、運用側の私の意志力に依存する設計でした。意志力は毎日同じ量では出ません。夜遅い、朝忙しい、他の業務に手を取られる。そのときの1回の判断ミスで、翌日の記事が飛ぶ、という構造を作ってはいけなかった、というのが結論です。

3つの設計判断の、やめる前と後の週次書き直し件数の指数比較グラフ

3つの手直し後、同じ運用の週に発生する書き直し・落穂拾いの件数は、指数で見て1割以下になりました。1週間の作業の中で、朝の緊急対応に使う時間が消え、その時間が新しい企画のリサーチに回るようになったのが、いちばん大きな変化でした。

6. 経営者にとっての翻訳 —— AIを業務に入れるときの3つの問い

私の話は「毎晩ブログを書く仕組み」ですが、同じ穴は、社内でAIを使い始める会社ならどこでも踏みます。

もしこれからAIを業務に入れようとしているなら、私からは3つの問いをお渡ししたいです。

  • その運用は「毎晩、あなたが正しく判断できる前提」になっていないか? —— 意志力に頼らない仕組みに寄せる
  • その運用は「暴走したら止められる前提」になっていないか? —— そもそも一度にたくさん動かない設計にする
  • その運用は「後で人が直せる前提」になっていないか? —— 後で直す箱を、最初から作らない

AIの設計でいちばん強い判断は、「何を入れるか」ではなく「何をやめるか」でした。

私は建設現場の実務を22年やってきて、6年目からずっと現場は「決めごとが少ないほど回る」という肌感覚を持っています。AIの運用も、まったく同じでした。

御縁では、AIを業務にどう入れるかの入口の1〜3日を、経営者の方と一緒に整理するご相談をお受けしています。私が自社で踏んだ穴も、そのまま共有します。「うちは何からやめておくべきか」を一緒に見ていただければと思います。

Masaharu Ishimoto

この記事を書いた人

Masaharu Ishimoto(御縁 GROWTH)

AIエキスパート / 現場実務22年

22年間ずっと現場側で実務をしてきた人間が、いまはAIエージェントを毎日の業務に組み込んで運用しています。うまくいったことも、任せて失敗したことも、そのまま書いています。

🎬 プライベート
X
TikTok
Instagram
💼 お仕事
Instagram
Facebook
▶ YouTube
チャンネル(準備中)

☀️ AIをどこから業務に入れるか、一緒に整理しませんか?

実際にAIエージェントを日々動かしている立場から、御社で最初に任せられる仕事を無料で洗い出します。

無料相談・診断はこちら

お電話 090-1888-7622(平日9:00〜18:00)/ 公式LINEで相談